選考結果について

奨励賞

富山市まちなか賑わい広場「グランドプラザ」GRAND PLAZA

富山県富山市総曲輪三丁目8番39号
全天候型多目的広場

まちなかの賑わい拠点として整備した「グランドプラザ」は、ガラスの大屋根で覆われた全天候型の多目的広場空間で、平成19年9月にオープンしました。整備にあたっては、隣接する立体駐車場及び、商業施設の2つの市街地再開発事業と一体的に行ったもので、区域内の既存の市道を集約するとともに、市街地再開発事業によるセットバックにより、約1400㎡の広場空間を創出しています。
グランドプラザのデザインの特徴は、建物にかかる水平荷重を隣接の商業施設に負担させることにより、柱、梁などの構造体を出来るだけ軽快なものとし、ガラス張りの解放的なイメージをより際立たせています。また、壁は、約2m角の強化合わせガラスを魚のうろこのように重ねながら、約15cmのすきまを設けるとともに、南北の通行部分は地上から一定の高さまで壁面を設けない構造とし、屋根がかかっていながら、換気、通風が充分確保された屋外に近い環境となっています。
設備としては、正面に277インチの大型LEDディスプレイを設置するとともに、無機質な空間に緑を演出するため、モバイルグリーンという容易に移動可能な樹木を5基設置するなど、様々なイベントに合わせた空間形成に寄与しています。さらに、倉庫兼用の昇降式舞台や、12カ所の電源ボックス、3カ所の汚水枡、4カ所の給水栓を床下に設け、各種イベントに対応できるものとなっています。
完成から2年半の市直営での管理を経て、平成22年度からは指定管理者として、中心商店街を中心に活動するまちづくり会社「㈱まちづくりとやま」が管理を行い、年間100以上(稼働率:休日100%、平日73.9% (H27年度実績))の様々なイベントが開催されています。また、グランドプラザ前では、施設完成前に比べて2倍程度の歩行者数を維持しています。
さらには、平成21年12月に、市内電車環状線「セントラム」が開業し「グランドプラザ前」電停が設置され、グランドプラザを背景に近未来的なデザインのLRTが走り抜けるといった都市的な景観を創出しています。このように、グランドプラザは、多様な人々が集い、賑わい、文化を発信する富山市のまちなかの中心的な役割を果たし、市民の様々な活動や交流の拠点となっています。

《主な関係者》
○金子 政史(佐藤工業株式会社北陸支店)/施設の施行
○淺石 優(株式会社日本設計(当時)、東京都市大学(現在))/設計統括
○村上 正明(株式会社日本設計)/意匠担当
○森 雅志(富山市長)/事業の推進
○望月 明彦(富山市助役(当時)、東京地下鉄株式会社(現在))/事業の構想立案
《主な関係組織》
○株式会社アルタ・山本電機株式会社 共同企業体/電気設備工事
○株式会社理温工業/給排水設備工事
○株式会社ほくつう/大型映像装置
○株式会社福田園/モバイルグリーン設置
《設計期間》
2004年~2005年
《施工期間》
2008年3月~2009年8月
《事業費》
15.2億円
《事業概要》
敷地面積:約1,400㎡(約21m×約65m)
主要用途:屋根付き多目的広場
主体構造:鉄骨造
階数:地上1階
設備:大型映像装置、可動式舞台(床下収納庫)、電気、通信、給排水設備、モバイルグリーン
備品:イス、テーブル、照明、音響 他
《事業者》
富山市
《設計者》
株式会社日本設計(元日本設計プリンシパルデザイナー淺石優)
《施工者》
佐藤工業・日本海建興・松村建設 共同事業体

講評

JR富山駅からLRTに揺られ目的の停留所に到着すると、眼前にオフィスビルの街並みにガラス張りの「グランドプラザ」が際立つ。計画当初は、市街地再開発事業区域の間の商業施設のバックヤード予定地であったが、「市道」を集約した土地に換え、広場条例で管理する屋根付き多目的広場として整備された。積雪寒冷地の気候にも配慮したガラス張りの開放性を、水平荷重を隣接の建物に負担させながら、柱、梁などの構造体に軽快さを加えるなどの施設デザインの巧みさがひかる。竣工時は、前例のない全天候型の多目的公共広場として話題を呼んだ。竣工後10年経過した今でも、メンテナンスが行き届いた古さを感じさせない施設、そして年間100以上のイベント開催や日常的にも生活の場として活かされている。特に「グランドプラザ」に人々が集い、賑わい、文化を発信する富山市のまちなかの中心的役割を継続していることは、交流拠点づくりのモデル事業として今後も奨励すべき作品であると評価できる。(森田)