グランルーフ:東京都千代田区丸の内一丁目9番1号
駅前広場:東京都千代田区丸の内一丁目及び八重洲二丁目の各地区
グランルーフ:店舗、駅施設、交番、駐車場
駅前広場:交通広場
東京駅八重洲口開発は、首都東京の新しい顔づくりとして、丸の内側の復原された東京駅丸の内駅舎の「歴史性」を象徴する玄関口に対し、八重洲口を「未来」を象徴する玄関口と位置づけ、「先進性・先端性」を表現しました。2013年9月にグランルーフが完成、2014年9月に駅前広場の整備を終え、東京の新しいゲートが完成しました。
グランルーフは「光の帆」をデザインコンセプトとした滑らかなフォルムの鉄骨フレームと、その下側に大きな1枚の布のように広がる膜屋根の構成で、大きな「むくり」を持った大屋根となり、東京駅を行きかう人々を優しく包み込む空間として、八重洲口の新しい歩行者空間を創り出しました。
開発敷地と一体的に整備された駅前広場は、もともと狭隘だった広場の奥行きを拡張し、バス・タクシーなどの交通結節機能の改善を図る使いやすい広場とするとともに、駅前広場に面した建築敷地に立体的な広場空間を設定し、広場の通路空間を広げて、歩行者や広場利用者が使いやすい駅前空間を整備しました。約80本の常緑樹と落葉樹の緑陰「緑の雲」は、「光の帆」の大屋根と地上部の駅前広場の様々な人々の営みや交通機能と周辺の歩行者ネットワークをかさね、柔らかく包み込むデザインにしています。
超高層ツインタワー、デッキ、大屋根、駅前広場にいたるすべての空間を一体的にデザインしたひとつの都市のランドスケープはクリスタルな建築に対して、柔らかな緑によって自然を織り込み、四季折々の表情を創り出しています。
また、「緑」・「水」・「風」・「歴史」の環境に配慮した新しい東京駅の顔にふさわしい緑豊かな環境空間として生まれ変わりました。「緑」は四季の彩りをつくる高木・地被の緑化に加え積極的な壁面緑化の取り組みを、「水」は雨水再利用を、「風」は風車を媒体とした自然エネルギー活用を、「歴史」は江戸城外掘りの石垣の一部再現をそれぞれ示しています。
象徴性と一体性を持ちつつ、人々の往来を柔らかく包み込む姿を持つグランルーフ。昼は太陽光を柔らかく変換し、夜は間接光を受け浮遊している感覚を与える。表情の美しい変化が印象的。供用しながらの工事や権利関係の複雑さゆえに困難な調整があったであろうが、一枚の布がたなびく様相をなし、一体的な舗装デザインによって提供された統一感は秀逸である。広場は、高木と壁面緑化の組み合わせで緑視率を向上させ、ペデストリアンデッキから「緑の雲」と呼べるの眺めを確保している。細やかな植栽計画によって彩が提供されているが、多用された壁面緑化の支持基盤の経年劣化や、シマトネリコの大木を人工地盤上に展開したことによる重たい印象が気がかりであった。地域性の高い樹種の検討も期待したい。交通広場が拡張されて機能向上しているものの、タクシーの動線には工夫が必要であろう。サインやバスシェルター等は、シンプルなデザインでグランルーフが内包する空間に適度に配置されており、利便施設の多さを感じさせない軽快な空間は高い評価に値する。歴史を象徴する丸の内側と、未来を象徴するこの八重洲側が東京の玄関口の顔として、時間を積み重ねていくことを願う。(忽那)
八重洲通りから東京駅を臨むと、超高層ツインタワーの間に浮かぶ大きな膜屋根が見えてくる。開発以前、東京駅八重洲口は、駅ビルの一部でしかなく独自の存在感はなかった。この開発コンセプトは、丸の内口の「歴史性」を象徴する玄関口に対して、八重洲口には「未来」を象徴する玄関口と位置づけた「先進性・先端性」としている。八重洲口に浮遊する膜屋根・グランルーフは、他の駅にはない、他の駅では展開できない、「未来」そして「先進性・先端性」を象徴するデザインである。地上部の駅前広場を緩やかにラウンドするように立体的に配置された鉄骨フレームで張られた、大きな「むくり」を持った半透過のグランルーフは、まさにデザインコンセプトの「光の帆」を表現している。グランルーフにやさしく包み込まれるように、地上部とデッキ部による駅前広場が創られている。駅前広場は、グランルーフの「光の帆」に対し「緑の雲」をデザインコンセプトに、常緑樹と落葉樹の緑陰空間を形成している。超高層ツインタワーのクリスタルな建築の間を、やわらかな「光の帆」とやさしい「緑の雲」で結ぶグランルーフと駅前広場は、空間に秩序を与え、かつ八重洲口らしさを表現する個性的なデザインとして高く評価できる。(森田)
※掲載写真撮影者は左から5枚目が堀内広治(新写真工房)、その他はSS東京