東京都新宿区霞ヶ丘町5-7
都市公園
MEIJI PARKは、都立公園として初のPark-PFI事業として、公募・再整備された都市公園である。東京の超都心に位置し、スポーツクラスターに囲まれた場所で、ハード・ソフトの両面の工夫により、都市居住者や国内外の多様な訪問者に開かれた、多世代が自然に共存しつつ未来へ受け継ぐ「レガシー」となる公園を目指した。土地の歴史にみる「人と自然と建築とまちが共生、循環した関係性」を紐解き、谷地形の再構築により緑や歴史を身近に感じられる空間をデザインした。
敷地西側【にぎわいと交流のゾーン】は、都市の中の魅力的な公園の顔となるよう、多世代交流の場やコミュニティ活動の中心となるような広場空間と、かつての渋谷川の流れを現代的に表現したせせらぎを創出した。東側【豊かなみどりのゾーン】は、新国立競技場、周辺緑地と繋がる多様性に富んだ緑の拠点として持続的生長が可能な杜と位置づけ、かつての渋谷川の支流域であった谷地形の復元を試みている。加えて、セットバック空間「みちひろば」によって都市スケールの街並みの一体感を生み出し、隣接街区との接続によって「どこからでもアクセスできる」公園の回遊性を確保するなど、敷地の高低差という制約を公園の魅力に転ずるような動線・造成設計を行った。
「誇りの杜」では、指南役として東京農業大学教授(公募当時)の濱野周泰先生に意見をいただきながら、時間軸を意識した「ハーフメイドの杜づくり」を念頭に、武蔵野の雑木林をイメージした約60種・約700本の常落混交による杜づくりを都民協働で進めている。
2023年10月の部分オープン以降、様々な時を過ごせる心地よい居場所を提供しつづけている明治公園は、人々が誇りをもって公園づくりにかかわり、愛着を持って地域と共に成長をし続けている。明治公園はこれまでも、これからも都市公園の先駆けであり続けたいと願っている。
国立競技場に隣接し、かつて都立団地や東京五輪の報道基地として使われてきた敷地が、公園として新たに整備された。都立公園として初めてPark-PFI制度を導入した。都心の一等地に求められる多様な役割、すなわち、子供たちが遊ぶ、木々の中を散策する、テラスで食事やお茶を楽しむ、などの多様な機能が、高いデザイン力によって一体的にまとめ上げられている。とりわけ重要なのは、渋谷川支流域の谷地形を現代的に再解釈し、敷地の半分を使って「誇りの杜」と名づけた森を創出した点である。100年先を育むことを前提にしたこの取り組みは、経済性と環境価値の両立という難題に対する挑戦であり、多くの調整や努力が積み重ねられたことがうかがえる。また、レインガーデンによるグリーンインフラの可視化やセットバックによる歩道拡幅など、周辺環境の質を高める工夫も随所に見られる。一方で、駐輪禁止の張り紙が多い点は、地域の生活者による日常的な利用が想定より高かったことの表れとも考えられ、運用面でのさらなる改善が望まれる。100年の杜が10年という民活事業の枠内でつくられたことが皮肉とならないよう、持続可能なモデルとして成熟していくことを期待したい。(星野)
まだ夏の日差しが残る薄曇りの過ごしやすい平日の朝。大通りに面したきれいな公衆トイレを、タクシーの運転手さんをはじめとした拠り所にしている方々の姿を目にする。インクルーシブ広場では、その名の通りのデザインの賜物で、団体で来訪している子どもたちと親御さんと来訪している子どもたちが程よい距離感で遊んでいる。園内には、一体何人分の座れる座りたくなる場所があるのだろうか。地形を活かした傾斜によって眺めと拠り所と座りたくなるムードが座具のデザインに関係なく、程よい距離感にあり、団体でも複数でも単独でも居場所がある感じが至るところに在り、多様な居方を目にする。飲食店等の店舗も複数面していながら、購入しないと居づらいわけではなく、かといって店舗が遠いと感じることもなく、滞留空間や通路からの距離感が絶妙で学びたい。気持ちよく続く広々とした通路空間では大勢のシルバーカーでの遠足まで享受できそうである。そして、敷地境界を気にすることなく歩き続けることが出来ることで大都市らしい多様な属性の共存を垣間見たが、こういった環境だからこその邂逅によって、この環境の、空間の力が発揮されたこれからの展開に期待したい。(山下)
※掲載写真撮影者:Tokyo Legacy Parks 株式会社