東京都千代田区神田猿楽町1-1-2
公園
錦華公園は、関東大震災後の復興小公園の一つとして、旧錦華小学校(現お茶の水小学校・幼稚園)とともに開園された。今回の改修は、お茶の水小学校の再整備に合わせて行われた。
対象地は本郷台地の崖線に位置し、北側・東側には大きな斜面と斜面林を有する特徴的な地形である。この地形的特性から水が集まりやすく、開園以前から池の存在が確認されていた。復興小公園の開園当時、三方を街路に、一方を学校に接する配置となっており、斜面や池を活かした自然風庭園と、平坦部に整備された自由広場・遊戯広場とが共存する構成となっていた。
今回の改修においては、復興小公園としての歴史的価値の継承を意識したプランニング・デザインを行った。具体的には、斜面の石組みや斜面林は可能な限り保全し、円弧状に配置された階段や園路は、当時の形状を踏襲しつつ整えた。斜面下に位置する池については、復興小公園当時の形状をトレースし、復元を試み、石橋や池の石材などは再利用している。
池の西側には、遊具を中心とした北側広場と、自由に過ごせる南側広場を整備し、その間にはゴロゴロ広場と砂場を設けることで、空間の緩やかなゾーニングを図った。また、復興小公園の理念である「学校との一体的な整備」を継承し、学校と連携のうえ、公園側に大きな門を設けることで、学校側から直接出入りできる構成とした。これらの構成やデザインは、復興小公園の思想を現代に引き継ぐものである。
加えて、公園全体の地盤高を可能な限り低く抑えることで、特に西側からの視認性を高め、安全で安心な公園環境を実現している。園内各所には多くのベンチを配置し、昼間人口の多い千代田区において多世代が利用できる空間を目指した。
改修後は利用者も増加し、午前中は小さな子どもたち、日中はオフィスワーカー、午後は小学生、夜間には大学生と、千代田区らしい多様な世代による利用が見られ、日常の憩いの場として定着しつつある。
震災復興公園時からの地形、樹林、水路などを活かした、変化に富む都心の街区公園である。区の公園づくり基本方針の先行事例として、アンケートやオープンハウス、意見交換会など多様なチャネルで地元に意見を聞き、機能だけでなく配置や仕上げまで丁寧に設計に取り込まれている。隣接する幼稚園小学校側の出入口や境界部の高低差処理や歩道空間の確保など周囲との一体的な利用も計画されている。これらのプロセスにより、時間帯によって異なるさまざまな人に利用され、それぞれの過ごし方を許容する豊かな公共性が創造されている。
特に耐久性や維持管理を考慮して、素材選択、製作加工や施工まで考えられたベンチやキャノピーなどのストリートファニチャはオリジナルデザインで質が高い。
一方で、既存水路や和風庭園と新設施設の融合や街区公園としての多機能性の担保のために設置されたトイレや倉庫、遊具のデザインによる雑多な印象に課題も感じられる。(太田)
※掲載写真撮影者:左から2~4枚目、6枚目が山本康平