大阪府泉大津市小松町1-55
都市公園、広場
泉大津市に位置する約3.5haの市民会館等跡地に、市民活動と健康を促進する拠点として、公園用地(シーパスパーク)と民間活用用地(シーパスパーク広場)を一体的に整備した。
“市民の多様な活動を表現する舞台として様々な「うつわ」と「プログラム」を用意する”ことをデザインコンセプトとし、官民連携・市民共創により、市民のやりたいことを実現できる公園を目指して、3つのデザインを行った。
①市民の多様な活動や居場所をつくる「かたち」のデザイン
②官民連携により公共財産を有効活用し、公共空間及び公共的空間を一体的に運用する「しくみ」のデザイン
③地域や市民と連携し、地域交流の促進と公園利用を活性化する活動と更新され続ける「うごき」のデザイン
①は活動がかたちをつくる、市民が育てる公園として、今後の更新の余地を残した「余白のある設え」とした。ランドスケープと建築を同じデザインコードで一体的に設計し、市民の多様な活動を大らかに受け止める「うつわ」のような、やわらかく抽象的なデザインとした。また地形の操作や植栽の密度・配置により、多様なアクティビティが生まれる仕掛けを随所に散りばめた。
②は昨今、公共投資だけでは恒久的にオープンスペースを持続することが厳しい状況であり、持続可能な都市公園をつくるには官民連携事業が必要不可欠であったため、指定管理者、魅力向上事業者、行政の三者が互いに利益を得る事ができ、努力する仕組みを構築した。
③は工事期間中のワークショップで市民のリーダー育成、チームビルディング、公園運営の市民組織「シーパスパーク・クラブ」の立ち上げを行い、供用開始と同時に市民活動が開始できる体制を整えた。市民の「これがしたい」という意見を、大小様々なイベントや活動を継続的に行うサポートを行っている。
3つのデザインにより本公園は、多くの市民が利用する新たな憩いの場所として地域コミュニティの活性化に貢献している。
日本の公園は、禁止事項の張り紙が目立ち、いつからNIMBY: Not In My Back Yardの仲間入りをしてしまったのかと嘆かわしく思うことが多い。しかし、この公園には驚くべきことに禁止事項の張り紙が見当たらない。それどころか、ボールを含む各種遊具やアウトドアチェアの貸し出しに加え、お菓子や飲み物、さらにはビールなどの酒類の販売まで行っている。公園の中心に位置するパークセンターの近くには屋根付きの可愛らしい駐輪場があり、公園内を子供たちが自由に自転車で走り回っている。イベントも数多く企画され、キャンドルナイトや盆ダンスフェスなど、夜の催しも実施されている。園内のレストランでは地元住民が食事を楽しみ、賑わっている。それぞれが思い思いに過ごせるこの公園の自由さは実に素晴らしく、これが官民連携によって実現していることに驚嘆するとともに、自治体の強い意志と覚悟を感じる。
高木が少ないために日陰が少なく、夏季には居場所の拠り所が限られること、パークセンターの活用方法や外周部の植栽帯の設え・管理などには改善の余地があるように思うが、誰もが自由に過ごせる本来の公園の姿を提示した本作品の意義は極めて大きいと言える。(栃澤)
お彼岸の土曜日午後。お向かいに花屋と墓地があり、SHEEPATH PARKの広々とした駐車場を利用し墓参りをする方々の姿を目にしながら園内へ。翌日に催事を控えたお祭りプラザでは大型車両が進入し搬入作業をされていたが居場所はいつも通りで、子供同士、親子連れ、高校生グループが思い思いに過ごす。歩行者専用道でつながる円形スケートパークにも自然と足が伸び、ここが好きで遠方から来訪されているスケートボーダーの方とのおしゃべりが叶い有り難い。数は数十人かもしれないが、多様な属性、多様な居方を方々で目にする。それを支えるデザインの妙。歩きたくなる散策路を軸にちょい停めが叶う駐輪場の点在。縁や高低差を利用した座りたくなる居場所の点在。ふんわりと中心性があるため各々の姿が自然と目に入り安心でき時に微笑ましい。活動の強弱を促す植栽の手入れの加減が印象に残る。集中管理ではなく日々の営みとともに手入れもある感じというか。これからは植栽の状態にも地域の文化が現れるよう誘発する活動そのものも“土木デザイン”と呼べるのではないかと想像した。小学生が子供たちだけで戯れていた高架下のもんとパークとは紀州街道でつながりこれからが楽しみである。(山下)