熊本県上益城郡益城町宮園702
震災記念公園
2016 年4 月に起きた熊本地震の震源地として甚大な被害を受けた益城町では、震災によって失われた尊い命への追悼と共に記憶をしていく場となる震災記念公園の整備計画が進められた。「地域の人が日常的に来る場所」に震災の記憶が存在するという考え方の元、現地建て替えが行われた益城町役場新庁舎と新設された復興まちづくりセンターや整備が進む交通広場に隣接した町のゲートウェイとして位置付けられる約1,000 ㎡の敷地が公園の整備地となっている。
設計に当たっては、日常的に町民に親しまれる公園となることと「いのちの記憶」の継承の場としての公園のあり方が求められた。設計検討時にオープンハウス形式での意見収集や現地でのモックアップWS、庁内アンケートを行い、町民や役場職員が日ごろから訪れたくなる公園の機能やあり方を伺い、得られた意見を反映することで町民の暮らしの一部として使われる公園を目指した。敷地全体が北側の新庁舎から南側の復興まちづくりセンターに向けて5%勾配で下る地形的特徴を活かし、南側にセンターとフラットな緑地を設け、北西側の約1m 高い場所に「いのちの記憶」を象徴するモニュメントを配置している。日常的には緑地がセンターの前庭として施設との一体的な利活用が行われ、式典などの際にはモニュメントを中心とした追悼の場となるようにしている。震災の展示があるセンターや新庁舎との連続性には重きを置いており、センター内の回廊型展示である「記憶のプロムナード」からつながる公園内のスロープ動線を上がった先にモニュメントを配置し、一連の展示のようにすることで記憶の継承の場としての役割を持たせている。また、先行整備された新庁舎にも働きかけ、外構の植栽計画を一部変更し、旧庁舎にあったシダレウメをモニュメントの背景に移植している。復興事業により町が新しくなるなか、土地の履歴や時間をつなぐ大事な存在として位置付けている。
実見では、この場における「中心性」の意味を楕円の形状から探ろうとしていた。しかし「それ」は視覚や景観デザインの中心性ではなく、より切実なものだった。
日常的な活動の「中心」である町役場と「復興まちづくりセンターにじいろ」を結ぶこの公園について、審査の場では、広場の楕円の配置、円弧がにじいろ軒先に近接していることなどが議論されたが、私はさほど気にならなかった。むしろ、人を「中心」に考えるなら、動線が軒先に陥入し、建物内部の回廊と噛み合わさっている現状に好感すら感じた。それは震災後の地域社会の再建に、この公園が優れた機能を発揮していることを、現地で出会った子供たちの動きが示していたからなのかもしれない。モニュメントやベンチの造形も高く評価されたが、入口周辺に空地が残り、隣接する交通広場の整備が進行中のため、現時点で最終的な評価には至らなかった。完成した暁には是非、再度応募して欲しい。(篠沢)