東京都豊島区西池袋1-8-26
公園、舞台(舞台棟)、飲食店・公衆トイレ(カフェ棟)
池袋駅周辺のまちづくりは、「世界中から人を惹きつける国際アート・カルチャー都市のメインステージ」の実現を目指す。「公園がまちを変える」として、4つの公園を「アート・カルチャー・ハブ」と位置づけ、公園整備をきっかけに周辺の民間施設と連携を図りながらその実現を推進している。
本プロジェクトは、1990年に東京芸術劇場と一体整備され、4公園の中で唯一池袋西口エリアに立地する池袋西口公園を「劇場公園」として文化・賑わい拠点化するものである。本公園から池袋、そして国内、世界へと魅力を発信し、池袋が世界中から人を惹きつける都市となることを願い、公園の愛称を「GLOBAL RING」とした。
計画は、かつてこの地にあった「丸池」の記憶をデザインの源泉にしている。秩父山系の湧水がつくりだした丸池は、池袋の地名の由来ともいわれ、地域の人々の憩いの場でもあった。単なる劇場型の公園をつくるのではなく、地元に根付いた文化や土地の記憶を未来へつなげる場所となることを目指した。
公園の中心に円形広場とリングを、その周囲に舞台棟とカフェ棟の2つの建物や緑豊かな樹々を配置することで池袋西口を象徴する空間を形成した。また、芸劇やメトロポリタンプラザ等、周辺施設からの様々な動線を引き込むとともに、周囲のまちに背を向けない裏表のない施設計画としている。まちと公園が相互につながり合う計画とすることで、池袋を象徴しながらも周囲のまちをつなぐ機能を果たし、周辺環境にも配慮した施設とした。
竣工後、市民イベントから世界的な音楽家によるクラシックコンサートやファッションショーまで様々なイベントが開催されるとともに、木陰で休む人たちや水景で遊ぶ子どもたちの日常が見られるようになった。公園周辺では、大規模開発が計画されている。地域に愛されながらも、世界に新たな文化を発信し続ける活力にあふれた公園が、池袋駅西口の新たなまちづくりをけん引することを願う。
文化・カルチャーが成熟し社会が寛容になると、都市はこんなにも楽しい空間になるのか、薄暗く、足早に通り過ぎるだけだった場所が、国籍や年齢を問わず、多くの人々の居場所に生まれ変わることができるのか、と感嘆し、行き交う人々、佇む人々を見ながら感動を覚えた。
空中に浮く円形リングは多方向から来る人々を受け止める緩やかな中心性を生み、屋外広場を空中で束ねることで「空間」をつくりだしている。隣接する芸術劇場への軸線に合わせて本格的な音響・映像装置を持つ屋外ステージが配置され、日々様々なイベントが催されている。指向性の高いスピーカーを用いているとはいえ、ライブイベントになると完全に周囲に音が漏れているが、それを許容できるのは池袋という街の特性だろうか。運営を含め、これらを実現し、継続し続けている関係者の努力は賞賛に値する。都市のパブリックスペースのあり方に一石を投じる優れた作品である。
何気なく訪れた人が、思いがけず新しい文化・カルチャーに触れるきっかけとなる場所であり、開かれたパブリックスペースだからこそ、文化振興に対する貢献的価値は高い。今後も屋外劇場としての都市公園が継続していくことを強く願っている。(栃澤)
プロポーザル時から注目していた作品であったが、当時と今回の印象は異なって感じられた。屋外劇場を構成するリングと支柱は、日常的には高さや色彩を周囲の都市景観と関係しつつ溶け込んでいた。その様子は例えばメトロポリタン口から公園に近づくとよくわかる。2Fから地上に降りるエスカレータの途中からはビル開口部の高さとリングの高さが呼応して見え、地上に降り公園に向け歩き出すとリングが背後の商業ビルの色彩に、支柱が周囲の樹木に溶け込む様子がわかる。まだリングは実感できない。道路を渡りはじめてリングの輪郭が空を切り取り、ようやく実態を伴う。しかしリング自体には隙間があり空に抜けている。
都市に開かれた人々の移動と滞留空間のなかで、リングや支柱の存在感は強くは感じなかった。イベント時も、ハレの空間を演出しつつも脇役に徹している。
日常と非日常を使い分けて両立させる公園・広場として都市、ランドスケープデザインとしては評価された。もちろん土木景観デザインでの評価も高かった。ただし表彰台の頂上に並び立たなかった背景には、土木デザインが「社会に必要とされる切実さ」に熱量の差があったのかもしれない…。(篠沢)