佐賀県 佐賀市 日の出1丁目・2丁目
スポーツ+エンターテインメントパーク・広場・立体横断施設・道路
2024年10月に佐賀県で開催される「SAGA2024 国スポ・全障スポ」に向けて、佐賀県と佐賀市によって整備された「SAGAサンライズパーク」「栄光橋」「佐賀市文化会館西側広場」「国道263号」の一体整備事業である。
計画地は、JR佐賀駅の北、徒歩約15分に位置する佐賀県総合運動場一帯で、1976年の国民体育大会佐賀大会の主会場であった場所でもある。既存競技場や時間をかけて育ってきた樹木等を可能な限り保存活用しつつ、そこに新設されたアリーナや屋内プール、カフェ・ショップを、ペデストリアンデッキとオープンスペースで連続させ、国道で分断された佐賀市文化会館を新たな歩道橋「栄光橋」でつなぐことによって、アリーナからの多くの人流を安全に誘導するとともに、エリアとしての一体的な利活用を目指した。
県と市、建築・土木(道路・広場・橋梁など)の管理区分、分離発注された設計者・施工者といった数多くの境界を超え、トータルデザインによって、関係者間の調整と連携を図り、建築・舗装・照明・ファニチャー・サインなど各所のディテールに至るまで、俯瞰的な視点から全体をコントロールすることで統一感ある景観を生み出し、ダイナミックかつシームレスに人々を誘導する空間をつくりあげた。これは、「事業に取り組むすべての主体がデザインの視点でものごとを磨き上げること」を目標にし、佐賀県が長年推進してきた「さがデザイン」の成果でもある。
オープン以降、佐賀ではこれまでになかったエンターテイメントやスポーツイベントが毎週末開催され、県民の楽しみの機会が増え、夢や感動を生み出す拠点として親しまれている。日常的には、ジョギングや散歩に訪れる人の姿など、ゆったりと過ごす豊かな暮らしの風景が見られるようになり、「県民の自慢の場所」となったと聞く。結果、公共投資が地価上昇とともに税収増に繋がり、民間投資を呼び込む好循環を生みつつある。
まずトータルデザインの達成度に敬意を表したい。SAGA2024国スポの開催を機に県と市が一丸となり、土木・建築、設計・施工等、多くの垣根を越えた一体的整備が実現している。栄光橋の架橋によって、佐賀市文化会館側との往来が容易となり、交通量の多い広幅員の国道263号による分断を解消、より広範なエリアとしての利用に結実している。栄光橋自体のデザインも、連続するブラケットとシンボルパイプが優雅に広がり、全溶接接合による桁外面仕上げとそれをやさしく包み込む夜間照明の美しさには目を奪われた。また栄光橋と繋がるペデストリアンデッキはイベント時のテント設置等にも対応でき、ジョギングや散歩等を楽しむ多くの市民の姿が実見された。橋からパーク内に至る全ての柵が細く透過性の高い縦格子で統一される等、ディテールに至るデザインコントロールも徹底されている。店舗が並ぶテラスでは、温かみのある県産の杉材が使用され、テーブル等のファニチャー、着座可能な段差空間の配備等、人を寄せつける場所への拘りも随所に見られた。パークと歩道の舗装材の統一や文化会館西側広場内から歩道まで伸びる石材舗装のラインも、地味に見えて県・市・県警等との連携なくしてできない証左といえる。最も感心させられたのは、パーク内に一般の駐車場がなく、駅からの徒歩と近隣ショッピングモールの駐車場利用を促す、回遊性と波及性を目指す戦略の実践である。上述のトータルデザインを含め、多くの調整と協議のうえに達成されたことは言うまでもなく、土木デザインの労作として高く評価したい。(柴田)
規模の大きさもさることながら、施設のバリエーションの豊富さや複雑さにおいてもこれまでの受賞作の中で際立った存在といえるだろう。一体的な事業として実施するにしても、施設の種類が多ければ多いほど全体のデザインコントロールは難しくなる。本作品の優れた点は、県と市、土木と建築、設計者と施工者などのさまざまな境界を越え、各施設のデザインにそれぞれ個性をもたせながらも、それらを「ひとつのデザイン」として破綻なくまとめあげたことにある。その要となっているのが、各施設をつなぐ空間の構成の仕方と全体にわたる丁寧なディテールの作り込みである。そのデザインマネジメントは見事というほかない。具体的なデザインについて言えば、まずは交通量の多い道路に面していながら人々が安心して利用できる空間づくりがなされている点が評価できる。地上レベルでは、道路の歩道に施設の敷地を接続し、舗装材を統一することで歩行者空間を広く一体的に整備しているほか、一段高くなったところにファニチャーのあるウッドデッキが設けられ、ショップのテラスも兼ねてゆったりと過ごせる空間が生み出されている。さらに2階レベルでは、各施設をつなぐデッキが施設間の主要な動線として設けられ、ジョギングコースにもなっている。そして栄光橋の完成度が非常に高い。橋のデザインでは特に桁裏や桁下の処理の仕方にデザインの巧拙が表れやすいが、構造のディテールから付属物の処理まで丁寧に処理され、桁下も居心地の良い空間にデザインされている。夜間照明も魅力的である。多くの人にぜひ一度訪れてじっくりと見ていただきたい作品である。(久保田)