選考結果について

奨励賞

長久手市公園西駅1号公園Nagakute City Koen Nishi Station Park No.1

愛知県長久手市神門前601
街区公園

公園西駅1号公園は、名古屋都市計画事業公園西駅周辺土地区画整理事業(施行者:長久手市)で整備された面積3,801.68 ㎡の街区公園である。同区画整理事業は自然の叡智をテーマに開催された愛・地球博(2005 年日本国際博覧会)の会場であった、愛・地球博記念公園に隣接しており、万博レガシーをまちづくりに取り入れた環境配慮型まちづくりを進めている。
公園西駅1号公園のデザインは、公園西駅1号公園と隣接する1号調整池(面積4,052.33 ㎡)と一体となった公園緑地空間と、長久手市が管理する普通河川香流川の緩傾斜護岸を活かした親水空間とで構成される。この内、公園緑地空間デザインは、2016 年に長久手市建設部区画整理課が株式会社オリエンタルコンサルタンツ中部支社の基本設計成果をもとに編集したが、公園西駅1号公園と1号調整池を合わせた約0.8ha の空間を、単なる緑だけでなく、地下貯留方式に変更した調整池上部に、植栽基盤の荷重を考慮したアンジュレーションを設けた。また、香流川とあわせた人の回遊性をもたせるよう、連続的な園路を配置すると共に、区画道路が横断する区間でデザインが断線しないよう、区画道路舗装に遮熱性舗装を採用した。
親水空間デザインは、2013 年から開催している「長久手市香流川整備計画検討委員会」(長久手市建設部土木課主管:2016 年から推進委員会へ改称)内で検討がなされ、株式会社オリエンタルコンサルタンツ中部支社が監理を担当した。区画整理課がその成果をもとに、緩傾斜護岸を活かした親水空間の具体化に取組み、緩傾斜護岸の勾配を30 度以下に抑え、出水時の安全な待避と圧迫感が軽減されたデザインをまとめた。
公園西駅1号公園は2022 年3 月に竣工し、1年が経過したが、最も若い地方自治体である長久手市らしく、若い世代だけでなく、香流川護岸も含め元気に歩かれる高齢者へ憩いの空間を提供している。

《主な関係者》
◯磯村 和慶(長久手市 建設部みどりの推進課(当時)、長久手市 建設部(現在))/基本設計時に、1号公園と香流川緩傾斜護岸を一体化する等のデザインを提案
◯伊藤 直幸(長久手市 建設部区画整理課)/1号公園のデザイン実現のため、計画・設計体制を提案
◯加利部 圭(長久手市 建設部土木課(当時)、長久手市 建設部区画整理課(現在))/実施設計時に、香流川の護岸改修を緩傾斜護岸とするデザインを提案
◯原田 晋(長久手市 建設部区画整理課)/1号公園と香流川緩傾斜護岸の一体化等のデザイン実現のため、計画変更を決断
◯梶原 康平(長久手市 建設部区画整理課)/実施設計時に、1号公園と1号調整池を一体的な緑化空間とするデザインを提案
◯加藤 恵理子(長久手市 建設部区画整理課)/1号公園で整備したデザインについて、庁内協議を実施
◯洞庭 敏昭(株式会社オリエンタルコンサルタンツ 中部支社 技術一部(当時)、株式会社オリエンタルコンサルタンツ 東北支社 道路部(現在))/基本設計時に、1号公園を緑化率100%としたデザインを提案
◯浅井 広巳(株式会社オリエンタルコンサルタンツ 中部支社 技術一部(当時)、株式会社オリエンタルコンサルタンツ 中部支社 総合計画部(現在))/実施設計時に、1号公園のデザイン実現化のための課題と対応策を提案
◯神谷 真(大島造園土木株式会社)/1号公園のデザイン実現のための施工方法を提案
◯飯沼 伸介(大島造園土木株式会社)/1号調整池のデザイン実現のための施工方法を提案
《主な関係組織》
◯株式会社URリンケージ/土地区画整理事業の施行に関する包括的な支援の一環として、1号公園周辺のデザイン形成へアドバイスを実施
《設計期間》
2016 年11 月~2017 年12 月
《施工期間》
2021 年9 月~2022 年3 月
《事業費》
90,744,500 円
《事業概要》
立地環境:名古屋都市計画事業公園西駅周辺土地区画整理事業地内
面積:3,801.68 ㎡
《事業者》
長久手市役所 建設部 区画整理課
《設計者》
株式会社オリエンタルコンサルタンツ中部支社
《施工者》
大島造園土木株式会社

講評

⻑久⼿市公園⻄駅1号公園は隣接する1号調整池と一体となった公園緑地空間、そしてその前を流れる長久手市が管理する香流(かなれ)川の水辺を活かした親水空間となっている。河川と公園を一体として整備することで広がりのある空間の形成に成功している。発展途上の周辺街区や隣接するIKEAなどとの今後の周遊性の確保や流域水循環的視点も含めた香流川の流量確保や水辺植物の管理がさらなる活用のカギとなるであろう。長久手市はかつて2005年に愛知万博が開催された街であり「万博レガシーをまちづくりに取り入れた環境配慮型まちづくり」を実践している。この市の戦略を後押しとして、長久手市の職員自らがマネジメントし、実現したことが評価される。河川と公園を一体として整備する事例は増えてきているが、「常識」とまではなっていない。今回の受賞が新たな「常識」を全国に広げることを期待したい。(中村)