徳島県徳島市北沖洲 ~ 川内町旭野
橋梁
吉野川サンライズ大橋は、徳島市の東海岸を結び新たな南北交通軸となる四国横断自動車道が、一級河川吉野川の河口部を跨ぐ位置に架かる15径間のPC連続箱桁橋(橋長1,696.5m)である。市の最東端に架かる長大橋であることから「サンライズ」の名が公募で命名されており、気象条件によっては上流側が早朝の良好な撮影ポイントとなっている。
本橋の基本デザインは、西日本高速道路株式会社四国支社が2014年度に発注し、株式会社エイト日本技術開発とともに実施した吉野川大橋基本設計にて検討されており、豊かな自然環境への配慮、環境保全に関する検討会での討議などを受け、様々な角度からデザイン上の工夫を盛り込んだものとしている。本橋のデザインは、架橋地である吉野川河口周辺が広大な干潟の広がり、多様な底生生物や魚類が生息し、渡り鳥が飛来する貴重な水域となっていることの影響を受けている。橋梁形式は鳥類の飛翔阻害とならないスレンダーなものとし、可能な限り支間長を大きくとる工夫を行った。高欄の高さは干潟の生物、鳥のねぐらへ車のヘッドライトが照射しないことまで確認している。
橋梁全体の耐震性を高める目的と橋梁側面の景観向上を目的として、流心部の6橋脚は上部工と剛結合。それに伴う橋脚頭部の形状を全橋脚で統一させ、剛結合でない橋脚においても該当部材が構造的に有効であることを確認している。
橋梁側面に排水管を添架する場合、φ600mm 管が全線にわたって必要となることが判明したため、デザイン面の向上と、荒天時の飛来海水の急速排除など安全性にも配慮して断念。新開発の床板横に張出して設置する側溝方式の排水溝を採用している。設置しているのは上流側側面であり、最も多くの視点場に相当する側面であることからもデザイン上重要なポイントであった。
一つの工夫が、作品の全てを良い方向に導いている点で、優れたデザインと評価した。その工夫とは排水システムであり、全長1.7kmを連続させた構造本体の工夫と呼応して、排水を支える開水路構造においても、ジョイントという(水漏れリスクという)弱点を克服している点である。
設計における施工環境への配慮、たとえば、工事期間の川底の浚渫を抑える観点からの橋梁形式選択や施工方法の吟味、さらには、高強度セメントを用いた桁高抑制等の工夫も、総動員して、破綻のないごく普通の橋に仕上げている。出来てしまえば、変哲のない姿であるが、他の類似橋梁と比べると、そのシンプルさは群を抜いている。
「やれば出来るじゃないか」とのフレーズを、これからの橋梁づくりの全てに活かしてもらう期待も込めて、優秀賞としました。それが、審査員全員の気持ちであることを添えて...(松井)
四国を代表する河川である吉野川の最河口部に位置するサンライズ大橋。景観の主対象としてデザインされる橋梁が多いなか、この橋梁はシンプルであること、エコであることに徹した質の高い美しい橋梁である。排水管や検査用通路を床板や箱桁内にかくすことにより、外観はこれ以上ないほどすっきりとしたものとなっている。またスレンダーな15径間にもおよぶ連続箱桁橋は、川面の波と連動してリズムを形成している。この橋梁の豊かな自然環境への配慮は徹底している。河口部と言うセンシティブな河川環境への影響を最小化するために、長支間化により最低限の橋脚数としたり、構造や施工方法の工夫によって河床や沿岸の浚渫量も最低限に抑えている。沿岸環境や海苔の養殖に配慮し高速道路面からの排水は吉野川に一切漏らさない床版一体型排水溝を採用している。鳥類への飛翔阻害を最小限化するデザインの他、高欄の高さは干潟の生物や鳥のねぐらへの車のヘッドライトが照査しないことまで確認している徹底ぶりである。見た目はコンクリートを多用したグレーインフラかもしれないが、この橋梁はグリーンインフラである。(中村)