選考結果について

奨励賞

行幸通り・行幸地下通路Gyoko_dori Gyoko_dori Underground_passage

【東京都千代田区】
用途 / 東京都道404 号・都市計画通路

 行幸通りは帝都復興史によると関東大震災後の帝都復興事業で延伸整備された幅73m(40 間)、4列銀杏並木を有する堂々たる街路であり、皇室行事や信任状奉呈式等に使われる由緒ある道路である。自動車交通の増加を受け、1960 年に行幸通り地下に整備された日本初の都市計画駐車場の出入口設置に伴い中央並木は一時的に撤去されたが、東京駅丸の内駅舎復元計画を機に、駅前広場や周辺建物等と調和した首都東京の顔に相応しい風格ある景観の保全・形成に向け、地下駐車場と一体的に行幸通り再整備の検討が始まった。
 異分野の専門家で構成された「東京駅丸の内口周辺トータルデザイン・フォローアップ会議(デザイン会議)」では事業計画段階から様々な角度でパブリックデザインの在り方が議論され、行政や民間等の各事業者も含めて基本的デザインを統一させる方針が共有される中、駅前広場との関連性も踏まえて先行的に行幸通りの形態が検討された。
 モノトーンの御影石を基調として東京駅と皇居を結ぶ品位ある軸線を強調したシンボリックな空間を目指すだけでなく、これまで閉鎖管理されてきた馬車道空間(中央帯)の一般開放による憩い空間としての利用を想定しながら、舗装材や4列並木をはじめベンチ、照明等のファニチャーにも本物の素材を使用することで経年変化による風情の醸成にも配慮したデザインとした。また、本計画では公民協調による事業スキームも重要なポイントとなった。周辺開発の駐車場整備の進展に伴ってその使命を終えつつあった都市計画駐車場地下1 階部分の公共地下通路及び根鉢スペースへの民間事業での用途転換(第18 回BELCA賞ベストリフォーム部門受賞)により銀杏並木復元を実現させるとともに、東京都が整備する保水性舗装(車道)に対して周辺ビルの再生水を活用した自動散水設備の民間整備等、公民協調による未来に向けた地球環境の在り方をメッセージとして伝える場としても活用した。

《主な関係者》
◯栗林 茂吉(三菱地所設計)/プロジェクト・マネージャー
◯岡田 忠夫(三菱地所 ビル開発企画部(当時)三菱地所 不動産ソリューション営業部(現
在))/事業責任者
◯安田 香平(三菱地所設計)/設計担当者(植栽帯及びその周辺の設計)
◯田代 英久(三菱地所設計)/設計担当者(散水整備の設計)
◯東条 正明(三菱地所設計(当時)三菱地所プロパティマネジメント(現在))/意匠設計長(地下通路の意匠設計)
◯小野寺 康(小野寺康都市設計事務所)/行幸通り地上部コンセプトデザイン、舗装パターン及び植栽帯周りのデザイン
◯南雲 勝志(ナグモデザイン事務所)/照明デザイン、ストリートファニチャーデザイン
◯熊谷 慎二(㈱トーニチコンサルタント)/道路修景設計主任
◯岡田 寛(㈱トーニチコンサルタント)/道路修景設計担当
《主な関係組織》
○東京駅丸の内周辺トータルデザイン・フォローアップ会議/当会議は、東京駅丸の内周辺トータルデザイン検討会での検討結果を尊重し、その実現に向け、一体的な整備が行われるよう各整備主体間の調整を図ることを目的とした組織である。
○東京都 建設局/行幸通りの地上整備事業者として、全体事業計画を立案、整備調整を
行った。
○東京都 第一建設事務所/行幸通りの道路整備に必要な設計を担当した。
《設計期間》
2004 年4 月~ 2005 年8 月(地下)
2007 年4 月~ 2008 年3 月(地上)
《施工期間》
2005 年9 月~ 2007 年3 月(地下)
2008 年12 月~ 2010 年3 月(地上)
《事業費》
公表は控えさせて頂きます 
《事業概要》
【行幸通り事業概要(地上)】
○整備概要
道路延長:約190m
道路幅員:73m(車道31m, 歩道12m, 中央帯30m)
車線数:8 車線
○その他
・首都東京の玄関口にふさわしい、品格のある都市の空間として再整備
・「東京駅丸の内周辺トータルデザイン・フォローアップ会議(座長:篠原東京
 大学名誉教授、副座長:内藤廣東京大学名誉教授)」に諮り、意見を反映
・公民協調でヒートアイランド対策として路上散水システムを整備
・地下通路躯体内に根鉢スペースを整備し、行幸通りの4列銀杏並木を復元【行幸地下通路(地下)】
〇整備概要
・面積:約1.13ha
・歩行者通路幅員:18m・通路延長:197m
・構造:鉄筋コンクリート
〇その他
・1960 年竣工の都市計画駐車場地下1 階部分を都市計画通路
 にコンバージョン
・通路の両側にギャラリーを設置し、賑わい空間を創出
・通路中央部には情報発信やイベントに対応する機能を装備
・東京駅地下広場及び周辺ビルとの接続部をバリアフリー化
・三菱地所が新丸ビルの建替えと併せて特許事業で再整備
《事業者》
地上:東京都建設局(施設一部:三菱地所株式会社)
地下:三菱地所株式会社
《設計者》
地上:東京都第一建設事務所(施設一部:㈱三菱地所設計)
地下:㈱三菱地所設計
設計協力者
小野寺康都市設計事務所
ナグモデザイン事務所
㈱トーニチコンサルタント
《施工者》
地上:大林道路株式会社(施設一部:大成建設㈱)
地下:大成建設株式会社

講評

 まず地上部。陛下や国賓が馬車などで通る中央部分は通常は開放され、歩行者空間になっている。四周を車道に囲まれているから、人が余りいないのはしようがないかも知れない。仲通りとの接続部には横断歩道が設けられ、仲通りの連続性に寄与している。植栽帯の立ち上がり部分に設けられたベンチはなぜか利用されず、立ち上がり上の部分に腰掛けている人が多いなど、デザイン面でやや不思議な部分はあるにせよ、それは大した問題ではない。
では地下部分。両側の大規模ビル開発は終わっているものの、近隣では大規模開発が多く進行中である中、現状では人通りが少ないな、という位である。丸の内側駅前広場の再整備や周辺の大規模開発が進めば、地上、地下とも使われ方や見え方も変わるだろう。現時点でこの区間だけで評価を、というのは難しい。周辺開発がさらに進み、駅前広場ができた段階での再応募に期待し、今回は奨励賞とせざるを得なかったものである。(高見)