選考結果について

奨励賞

新湊大橋(臨港道路富山新港東西線)Shinminato Bridge(Port Road Toyama Shinko Route)

【富山県射水市】
用途 / 道路橋

 富山新港は、昭和43年に新産業都市建設における新しい臨海工業地帯の基幹的流通拠点として、港口部を開削して開港した。この港口部の開削により道路と鉄道が分断され、地域間を往来するためには、道路の迂回、もしくは県営渡船の利用を強いられることになった。こうした影響もあり、東側地域は発展が遅れがちになり、分断された鉄道のうち東側の区間については、廃線という結末をたどった。以来、50 年近く分断された地域間の交流や絆を取り戻すための架橋事業は地域住民の悲願であった。
 橋梁デザインの実施に当たっては、斜張橋形式と縦断平面線形を前提条件とした。航路を跨ぐ2 車線の狭幅員橋で縦断位置が高く、港湾施設、古い町並み、新たな住宅地、海王丸パークなどの様々な風景の中で眺められることから、多様な風景と調和する橋梁デザインが求められた。
 経済性、維持管理性に配慮し、取付部をPC ラーメン橋、航路部を鋼・PC 複合斜張橋
とした。このため、主塔形状、接合部、橋脚形状の処理が重要な課題となった。主塔は、海王丸と調和し、基礎部の縮小化を考慮したA 折れ塔とした。主桁の接合部は、1箱3セル構造の複合構造を採用し、鋼2箱桁へスムーズに摺りつけることにより桁の連続性を確保した。
橋脚は、横梁が無いPC ラーメン橋脚形状を基調とし、斜張橋中間及び架け違い橋脚も形状を統一させた。中空断面と海水面下の充実断面の採用によるコスト縮減と耐震・耐久性の向上などの構造技術を採用して橋梁美と経済性を両立させた。
 両岸の地域は通学利用などがあり県営渡船が運航されているが、雨や冬期でも誰でもが安全に利用可能な全天候の歩道を桁下に配置することにより、地域の利便性向上やノーマライゼーション化等に寄与した。当該港湾には、港湾を見渡すような高さの眺望場が無いことから、新湊の新たな日和山としての眺望場の形成を図った。

《主な関係者》
◯中埜 智親(株式会社オリエンタルコンサルタンツ)/全体、細部デザイン検討、関係者調整(橋梁全体のデザイン性の向上を実現)
◯米澤 栄二(株式会社オリエンタルコンサルタンツ(当時)株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル(現在))/全体/細部デザイン検討、関係者調整(橋梁全体のデザイン性の向上を実現)
◯長井 正嗣 (長岡技術科学大学)/東西臨港道路技術検討調査委員会委員長、構造設計監修
◯東 惠子(東海大学)/東西臨港道路技術検討調査委員会委員 、景観デザイン監修
◯審良 郁夫(株式会社オリエンタルコンサルタンツ)/斜張橋部、自歩道実施設計(一連の橋梁としての連続性の確保を実現)
◯猪爪 一良(株式会社オリエンタルコンサルタンツ)/斜張橋部、自歩道実施設計(一連の橋梁としての連続性の確保を実現)
◯板橋 啓治(大日本コンサルタント株式会社 構造事業部特殊構造技術部長)/斜張橋部 基本形状の決定(美しいシルエットの実現)
◯新井 伸博(大日本コンサルタント株式会社)/斜張橋部 鋼PC複合構造形式の設計(均整の取れたプロポーションの実現)
◯平山 博(大日本コンサルタント株式会社)/斜張橋部 全体系の耐震検討、
及びケーブル・塔の詳細設計(大規模地震に対応する破綻のない部材寸法の実現)
◯白 星保(株式会社ニュージェック)/斜張橋部実施設計、自歩道実施設計(ライン性のある主桁の実現)
《主な関係組織》
○臨港道路東西線技術調査検討委員会 /デザイン全般に関する方針決定
○国土交通省北陸地方整備局新潟港湾空港技術調査事務所/委員会運営・関係機関調整
○国土交通省北陸地方整備局伏木富山港湾事務所/施工に関する全般調整
○三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 現:エム・エムブリッジ株式会社/新湊大橋の
主塔上部の設計(架設時設計)と施工 (美しいシルエットの実現)
○JFEエンジニアリング株式会社/新湊大橋の主桁の製作と施工(ライン性のある主桁の実現)
《設計期間》
2001 年4 月~ 2004 年3 月

《施工期間》
2002 年4 月~ 2013 年4 月
《事業費》
498 億円
《事業概要》
<橋長>
西側取付け部:1,000m
主橋梁部: 600m
東側取付け部: 870m
<支間割>
西側取付け部:(35.0+6@40.0+35.0)+(55.0+4@60.0+55.0)
+(50.0+4@60.0+50.0)m
主橋梁部:58.5+60.0+360.0+60.0+58.5m
東側取付け部:(2@50.0+55.0+2@60.0+55.0)+(50.0+4@60.0+50.0)
+(35.0+40.0+45.0+2@40.0)m
<構造形式>
西側取付け部:PC8 径間連続箱桁橋,PC6 径間連続ラーメン箱桁橋,PC6 径間連続ラーメン箱桁橋
主橋梁部:複合5 径間連続斜張橋
東側取付け部:PC6 径間連続ラーメン箱桁橋,PC6 径間連続ラーメン箱桁橋,PC5 径間連続箱桁橋
<車線数>2 車線
<荷重>B 活荷重, 群集荷重
《事業者》
国土交通省北陸地方整備局
《設計者》
基本設計:大日本コンサルタント( 株)
詳細設計:大日本コンサルタント( 株)
     ( 株) オリエンタルコンサルタンツ
     ( 株) ニュージェック 他
《施工者》
〇上部工担当会社
オリエンタル・白石・日本高圧JV/ 五洋・富士ピーエス・川田JV/ ピーエス三菱・大本組JV/ 西松/ ピーエス三菱/ 三井住友/ 昭和コンクリート工業/ 三菱重工鉄構エンジニアリング/ 錢高組/ 横河ブリッジ五洋・佐伯JV/JFE エンジニアリング/ 日立・川田JV/間組/五洋/ あおみ
〇下部工担当会社
五洋・東亜・佐藤JV/ 鹿島・前田・本間JV/IHI・日立JV/ 川田/東洋・佐伯・国土総合JV/
東亜・若築JV/ 若築・りんかい日産JV/ みらい・東急JV/ 大林組/ フジタ/ 大豊/ 奥村組/ 佐伯建設工業/ 本間組/ 株木/ 竹中土木/ 若築/ 鉄建

講評

 応募資料を見て、人口9万の市に対して規模が大きすぎるのでは、との危惧があった。実見してその意識が消えた訳ではないが、これはこれで景観として良かったのではないかと思う。2車線の狭幅員橋であることが好結果となり、斜張橋の高さと細さが際立ち、東西のアプローチ橋の優美なカーブによる上昇と下降に滑らかに連続して、たなびく羽衣のような浮遊感のある景観が秀逸である。町と港のゲイトの役割を充分に果たし、2本の主塔は海王丸のマストや火力発電所の煙突の垂線や斜線とも、呼応しているように見える。曲線のアプローチはドライバーに軽い緊張感を与え、ケーブルが心地よいリズムを刻む。海竜町側の新興住宅街から見ても圧迫感はなく、床板端部の処理や主桁のテーパーと橋脚の大振りな面取りなど、ディテールが想定通りの効果を上げている。EV塔と橋梁のデザインの一体性と自歩道橋部からの眺望の確保に、今一つの提案があれば、と惜しまれる。(武田)