【富山県富山市鵯島~安野屋】
用途 / 道路橋
昭和11 年に架けられた旧橋は、永く市民に親しまれた富山のシンボルであった。新橋を検討するにあたり、その要因を「①富山市街地越しの立山連峰への眺望の良さ」、および「②丁寧に設計された構造物としての魅力」であると抽出し、それらを継承するデザインを模索することとした。
①に対しては、桁橋を選択し、左右に開けた河川空間にあって、市街地越しに立山連峰へのパノラマが開けている架橋位置の特性を引き継ぐとともに、橋面施設は、歩道照明を高欄内蔵型とし、加えて照明柱と路面電車架線柱を集約したセンターポール型として、橋上空間をすっきりさせた。また、シンプルな中にも親しみが感じられるよう、ポールの形状は緩くY字形に先を開け、高欄は強い横風を和らげる構造とし、材料には地場産業に関わるアルミとガラスを採用した。
②に対しては、旧橋の魅力であった「桁が橋脚を軽やかに跳ねるようなリズム感」及び
「垂直補剛材の心地よい表情」に着目し、新橋の桁高変化曲線には軽快な印象となる3次放物線を採用し、加えて、高欄支柱の一部をフェイシアライン面に突出させ、桁側面に豊かな表情を形成した。また、旧橋の支承(ピン構造)部に見られた緊張感と、桁が脚から浮いているような軽快感を継承すべく、上部構造を2支承(3主桁)とし、その橋脚天端にR状の切り込みを設けて桁と橋脚の間に大きな隙間を挿入した。このような造形上の工夫により、永く市民に愛される、絵になる橋の姿を目指した。
色彩は、雪を戴く立山連峰をよりいっそう引き立てる色として「青鈍色(あおにびいろ)」を選定した。比較的長い橋の休憩場所としてバルコニーを設けたが、その形状は、側面景において桁高変化による軽快なリズム感を阻害しないように三角形とした。また、富山のシンボルにふさわしい、しっかりした橋詰広場を設置するとともに、高欄には、地域との関わりのインターフェースとして、地元小学生が作製したガラス玉を設置した。
神通川にかかる他の橋と異なり、立山連峰の眺望を確保できる上路形式としたことは大いに評価できる。橋詰めの親柱の納まり、橋面の舗装、共架柱もすっきりとして好ましい。この橋で最も美しいと感じたのは、桁下からの見上げである。リズミカルな曲線状のブラケット、2点支承の主桁と橋脚との納まりは、程よい緊張感があり、確かに美しい。桁の色彩も周囲に馴染んでいる。
高欄の透光板とガラス玉が汚れていたのは残念である。ガラス玉製作を通してできた縁―
小学生による自主的清掃―をぜひ継続して頂きたい。風よけのパンチングメタルと大きめの笠木は、川面を眺める大人には機能的であるが、通過する子供や車の視線を遮る存在となっている。橋面に配置されたベンチは、座ると川が見えない。かといって、道路側を向いて座るのは落ち着かない。今一つデザイン上の配慮があればと思う。
なお、3本の主桁のうち、中央の路面電車直下の桁の支承が省略されているのは、個人的には納得できなかった。(椛木)