【仙台市泉区高森、寺岡、桂、紫山、明通他】
用途 / 住宅、インダストリアルパーク、スポーツ公園(ゴルフ場含む)
泉パークタウンは仙台市の郊外約10kmに位置する開発面積1,070haの自然との調和を目指した街づくりである。居住機能を中心として業務、生産、商業、教育施設が有機的に結びついた複合型街づくりとしてバランスのとれた都市機能が配置されている。1969年に開発が始まり45年が経過しており順次開発を進めている。初期に開発したエリアは入居から40年が経過し、成熟期を迎えようとしている。
開発のコンセプトは、パークタウンという名にふさわしい“人と自然が触れ合いながら快適に暮らす街づくり、コミュニティーの形成”である。開発区域は住宅、商業・業務、スポーツ、生産施設ゾーンからなっており、全体の計画コンセプトをもとに順次開発が行われてきた。
住宅エリアは6つの住区に分かれており、居住者が永住の場所として愛着を持つ街づくりを目指し1つの住区ごとに開発を実施している。開発は長期にわたっているが、基本的な街の構造を決める造成計画、土地利用計画は当初の全体マスタープランに基づき策定されている。したがって景観計画においても街のシンボルとなる既存地形の保存や緑化計画、歩車共存型の道路計画など基本的な考え方はすべての地区で共通であり、その考え方を基本にエリアごとに特徴のある景観計画、街づくりを行っている。また、生産施設を配したインダストリアルゾーンについても積極的な緑化、土地利用や建築物形態の誘導や制限を実施し、内陸型工業団地にふさわしい景観が形成されている。
意図された環境が継続的に維持管理されていくように、ほぼ全エリアで建築協定や地区計画を定め環境の保全に努めている。また開発の初期段階からタウンマネジメント会社を設立し、環境保全に継続的に係っている。
最初の居住者が住み始めてから40年が経過しており、住民も三世代目に入っている。季節ごとに変化する街並みは、区域内はもとより周辺地区も含めて仙台の代表的な街としてさらなる発展が期待されている。
まず、設計から施工完了まで40年あまり、当初の基本コンセプトを貫いたことに敬意を表したい。緩やかな平面曲線で構成された街区道路、セットバックされた住宅、豊かな緑、統一感のあるサインや道路施設などが相まって、いわゆる大規模団地のイメージとは大きく異なる快適な街並みが創出されている。宅地造成においても傾斜を活用するなど、元の地形にできるだけ手を加えない工夫がなされている。農業用のため池を活用するなど、かつての風景を継承する公園も程よく配置されている。世代交代しても住宅を含む街並みが保持できているのは、緩やかな規制と住民の自主管理が確実に機能している表れであろう。この管理システムも当初から想定されたものとのこと。特に、1990年以降に入居が始まった二つの住区は、集合住宅棟の間や戸建住宅間に緑道が配置されるなど、質の高い整備がなされている。その街並みと比べると、1970年代入居の街区がやや見劣りがするのは残念である。(椛木)
泉パークタウンは今年のデザイン賞対象地区最大のもの、40余年にわたり造られてきた約1,000haのまちを評価せよというものである。広いまちをくまなく見ようと、車を借りニュータウン内を走り回った。比較的新しい開発エリアである「桂」や「紫山」等において、ややエキゾチックではあるが、外構と建築が見事に調和し、他にはない住宅地環境が造られている姿を確認した。申請書では広大なニュータウンの内、この2つエリアを重点的に見て欲しい旨が示されており、その意味は現地で確認できた、これまで開発を終えた5つのエリアのうち、他の3エリアはたしかに推奨の2エリアに比べると見た目は平凡なまちと言える。しかしながら、長い開発事業の中で、次第に内容を充実させ、最新のエリアの環境形成まで至り、その間古い住宅地の維持管理を合わせて進め、これを民間事業者が推進してきたまちづくりの取組みは高く評価できるものである。(高見)