選考結果について

奨励賞

ふらっとスクエアFlat Square

徳島県三好市池田町マチ2175番地3
公園

ふらっとスクエアは徳島県三好市の旧池田町の中心に位置する公園である。まちの賑わいを牽引してきた阿波池田駅前商店街と阿波池田銀座街が交わる場所に位置していること、阿波池田駅と歴史的なうだつの町並みとを結ぶ場所に位置していることから、小さな公園でありながらも地域にとって重要な場所である。
本公園の実現にあたっては「公園のパーソナル化」を目標とした。地域の重要な場所を、自分の居場所だと思い、親しみ、使うことで、地域の将来に寄与していくことを期待した。愛着のあった商店街の舗装を公園へ再利用すること、通学路を公園内に取り込んで若い人が日常的に公園に接する機会をつくること、利活用を寛容するフラットで使い勝手の良い公園とすること、適度な密度の植栽により整備後の公園への関わりを生み出すこと等、パーソナル化に向けた様々な試みを行なっている。
本プロジェクトは当初の公園設計の見直しから始まったが、デザイン検討、WSによる合意形成、詳細設計完了までわずか7ヶ月、工事期間5ヶ月といった極めてタイトな時間で、工事費も限られていた。そのような状況の中で、全体のデザインを取りまとめ、詳細設計を完了し、整備を実現したことも特徴である。
公園は竣工後約6年を経ているが、非常に綺麗な状態が保たれている。背景として、計画・整備を契機に地元で女性会が発足したことが挙げられる。毎日の清掃と年に数回の芝刈りや花植えが行われ、日常的に公園へ立ち寄るきっかけとなり、利用することで、綺麗に保つという好循環も生まれている。
日常的な公園利用に加え、イベント利用も徐々に増えつつあり、様々な利用形態が見られるようになった。また、公園周辺は、カフェや宿泊施設、ワインショップのオープンや、市立図書館の移転なども連動して、地域の新たな文化拠点になりつつある。個人の関わりとそれがもたらす社会基盤の自律的維持を目指した公園である。

《主な関係者》
○崎谷 浩一郎(有限会社イー・エー・ユー(当時)株式会社イー・エー・ユー(現在))/景観デザイン、実施設計
○山田 裕貴(有限会社イー・エー・ユー(当時)株式会社Tetor(テトー)(現在))/景観デザイン、実施設計
○真田 純子(徳島大学(当時)東京工業大学(現在))/デザイン再検討の提案、デザイン監修、コーディネーター
○田口 太郎(徳島大学)/コーディネーター
《主な関係組織》
○三好市/事業の構想及び推進
○協同組合阿波池田駅前商店街・女性会/公園の維持管理、公園の活用
○協同組合阿波池田駅前商店街/WSへの参加、公園の活用
○協同組合阿波池田銀座街/WSへの参加、公園の活用
○徳島大学地域創生センター(当時),徳島大学人と地域共創センター(現在)/WSの企画及び運営、合意形成
《設計期間》
2012年8月~2013年2月
《施工期間》
2013年3月~2013年7月
《事業費》
24,108,000円(工事費、消費税含む)
《事業概要》
公園面積:1094m2(北側:826m2、南側:268m2)
設備工:
 かまどベンチ2基 
 目隠しフェンス及びロングベンチ 32m  
 四阿1箇所、 
 照明工4灯(LED)
 インターロッキング357㎡
 スロープ 1式
 給水設備(手押しポンプ、散水線) 1式
植栽工:
 クスノキ1本
 ホルトノキ1本
 ハンモクレン1本
 コナラ2本
 アカシデ1本
 ヤマザクラ1本
 モミジバフウ1本
 張芝(野芝)256㎡
 コグマササ類76㎡
 フッキソウ8㎡
 ボックスウッド129鉢 
 アジュガ1016鉢
 ギボウシ216鉢
《事業者》
三好市
《設計者》
株式会社イー・エー・ユー
《施工者》
三工建設 株式会社

講評

この公園は駅近くのアーケード商店街に面している。芝生と舗装の開けた空間は商店街側から見るとひときわ明るく、街の中庭のように見える。シンプルなデザインだが、道路を挟むように円形の芝生が配置され、全体をひとまとまりに見せている。訪れたのは日曜日のお昼どきだったのだが、時おり近所にお住まいらしい人や中高生が立ち寄ってベンチに腰掛けて一休みしたり談笑したりしていた。眺めていると、ここを通る人や隣接する住宅の様子がじつに公園に対して打ち解けていることがわかる。一部を除いて公園の外周に境界壁や柵がなく、建物の壁面が直接公園に接している。通路がそのまま住宅に庭につながっていたり、住宅のベランダや壁面に飾られた植木鉢がまるで公園の植栽のように見えたりする。明らかに市民が植えて世話をしている草花が育っている一角もある。奇をてらったところはないが、気軽に使われ、美しく維持されている「隣人公園」である。(石川)