佐賀県佐賀市城内
県立都市公園
佐賀城公園は、江戸時代までは、佐賀藩の藩政の中心地として、その後も行政・教育・文化の中心となってきた佐賀市城内地区に位置し、県立図書館・県立美術館・博物館などの文化施設を有している。こころざしのもりは、このうち県立図書館の南側に隣接した一画である。整備から50年以上経過し、老朽化が進む公園施設や城内地区に位置する県庁舎を含めた公共空間をリノベーション(再編集)することにより、これら施設を周遊し、人の賑わう空間にすることを目指し、コンセプトの提案からエリアデザインの監修業務を株式会社オープン・エーが担当した。
こころざしのもりのデザインコンセプトは、「居心地の良い日常の図書館公園」である。図書館に接続するデッキ及びその前面に芝生広場が広がる学びと憩いの場では、家族や学生がカフェで飲み物を買ってデッキでくつろいだり、子供が走り回れる場となるような設計となっている。具体的には、蹴上高や踏み幅を工夫し、ゆっくりと腰掛け、広場を眺めながら本を読んだりできる「階段デッキ」を配置し、図書館についてもデッキに面した部屋をフリースペースに改装して開放したことで、図書館と公園をつなぐ快適な動線及び視線の確保をおこなった。また、子供が走りまわれるよう、既存樹木の整理をおこないオープンスペースを確保するとともに、親の見守り空間として、保存樹木の周囲に木陰ベンチを設置したり、南側築山の法尻に一部ロングベンチを設置したりしている。また、日常利用だけでなく、イベント時のテナントの出店者への配慮として、給水栓や電源BOXを配置している。
また、図書館と公園など、管理者が違う庁内各部局を政策部局のさがデザイン担当が横断的に調整し、公園の再整備だけでは成しえない居心地の良い空間を実現した。
近年、菊竹清訓氏設計の都城市民会館の取り壊しを始め、昭和のモダニズム建築の寿命の問題が起きてきている。この佐賀城公園の中には、内田祥哉氏と第一工房の設計のよる県立図書館と坂倉準三氏設計の市村記念体育館がある。古くなったモダニズムの名建築群をいかすために新たなランドスケープのデザインと図書館から伸びてくる新たなデッキによってこのエリアの魅力を再生させているのが、今回の計画である。傾斜した丘のような遊具や噴水などのモノ的仕掛けよりも、人々の滞在を促すようなデッキや木陰のベンチとといったシンプルな場所がこの場所の強い魅力となり、2つの建物を大きく包含してまとめ上げている。建築のストックをどう生かしていくかという建築的な視点によって、「建て替え」以外の手法を提案し、建築の寿命を伸ばすその視点を評価したい。(東)
※掲載写真撮影者は左から1・2・3枚目がオープン・エー