選考結果について

奨励賞

竜閑さくら橋RYUKAN-SAKURA BRIDGE

東京都千代田区大手町2丁目~中央区日本橋本石町4丁目
人道橋

竜閑さくら橋は、千代田区・中央区の特別区道として整備・供用開始された歩行者専用橋である。架橋位置は、日本橋川沿いの大手町側に整備された全長約900mの大手町川端緑道の動線を神田・日本橋方面へ接続し、かつ首都高八重洲線と都心環状線が合流する神田橋JCTおよび都心環状線の河川内橋脚に干渉しない位置に設定した。本橋整備の他、約1000m2の橋詰広場整備も行った。
神田・日本橋側の橋詰広場は、空間の有効活用や防犯上等の観点から、デッドスペースを減らし、護岸沿いに近づくことができる施設配置とするとともに、スムーズな歩行者動線を確保し、視認性が高い位置にエレベータを設置した。
再開発の北側ゲートとして神田・日本橋側から人々を迎え入れるため、本橋上空を横断する首都高と差別化を図る必要があった。一方で、下流側に近接し歴史的価値があり、クルージング等の観光スポットであるJRの外濠橋橋りょうへの眺望を極力阻害させない配慮が求められたため、曲線を取り入れた特徴的な断面形状とし、高欄を地覆外側まで伸ばすことで桁を薄く見えるように工夫した。
色彩は、再開発建築物をはじめとした周辺の構造物と調和させるとともに、長期間にわたって汚れが目立ちにくい銀鼠とした。
エレベータ建屋は、四面ガラス張りとし、意匠性、防犯性、安全性に配慮するとともに、建屋内に演出照明を配置し、夜間も視認しやすくした。
高欄は、角度の異なる2本の縦桟で構成し、視点の移動に伴い表情が変わるようにした。
照明は、高欄笠木に内蔵し、路面だけでなく縦桟も連続的に照らすことで機能照明としての基準を満足させつつ、昼間と異なった表情となり演出照明のような効果が得られる照明計画とした。
橋面舗装は、グレー系の落ち着いた単色の磁器質タイル舗装を基本とし、視覚障害者誘導用ブロックは、基準の輝度比を満足しつつ、一般的な黄色いタイルに比べ落ち着いた色彩を採用した。

《主な関係者》
○平田 学(株式会社鴻池組)/現場総括
○辰已 寛人(株式会社鴻池組)/現場総括
○神田 勇二(株式会社鴻池組)/設計総括
○上代 真之輔(株式会社鴻池組)/設計総括
○菅原 栄進(大日本コンサルタント株式会社)/橋梁上下部工の設計
○太田 泰弘(大日本コンサルタント株式会社)/橋梁上部工・下部工・付属物のデザイン、デザイン監理
《主な関係組織》
○独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部/事業の運営
○独立行政法人都市再生機構 東日本賃貸住宅本部/事業の実施
○千代田区役所/管理者
○中央区役所/管理者
《設計期間》
2014年7月~2015年8月
《施工期間》
2015年9月~2018年3月
《事業費》
非公表
《事業概要》
上部構造:3径間連続鋼床版桁(2径間箱桁+鈑桁)
下部構造:P1、P3~P6 円形柱鋼製脚(上下部一体)、P2 PCウェル
基礎形状:P1、P3~P6 橋脚場所打ち杭、P2 PCウェル
橋  長:122.042m
支 間 長:箱桁部54.400m+40.700m、鈑桁部20.963m
標準幅員:総幅員7.0m(有効幅員6.0m)
構造高さ:箱桁部1.4m、鈑桁部0.9m
活 荷 重:群集荷重
架設工法:箱桁部 送出し架設、鈑桁部 トラッククレーンベント架設
《事業者》
独立行政法人都市再生機構
《設計者》
株式会社鴻池組
《施工者》
株式会社鴻池組

講評

この作品は再開発事業で誕生した大手町プレイスへの北側ゲートとしての公共動線として、日本橋川で隔たれた大手町と日本橋・神田を結ぶことを目的に架けられた歩行者専用橋である。首都高速道路の高架橋と地下ボックス、日本橋川と交差し、JR中央線外濠橋梁との近接といった厳しい条件の中で橋梁計画・施工計画された橋である。
高欄縦柵の位置を地覆より下げてフェイシアラインを薄く目立たせ、渡河部箱桁とビル接続部の鈑桁との取合いも橋脚受梁を設けずに箱桁でスムーズに受け、主桁に扁平六角形断面を採用し桁高を薄く見せ、溶接継手の採用、吊り金具を設けず、水や埃が溜まらないディテールの採用など、製作者はご苦労されたが美しい主桁断面が実現した。
電車が見える絶好のロケーションにあり、ビジネスマンだけでなく保育園児のお散歩コースにもなっている。ただ、斜めに配置された高欄縦柵がエレベーター前の湾曲部で間隔が大きくなっているのは園児の利用を考えると今後の改善点である。(丹羽)