選考結果について

奨励賞

グランモール公園再整備Grand Mall Park Renewal Project

神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目
近隣公園

横浜市の大規模ウォーターフロント再開発であるみなとみらい21地区。その先陣を切って1989年に供用開始されたグランモール公園は長く「都市の軸」として市民に愛されていたが、およそ四半世紀を経て公園施設の老朽化に加え、隣接敷地に多くの建物が竣工したことによる周辺土地利用の変化、「横浜みどりアップ計画」等の横浜市の取組もあって再整備が実施された。
「Rambling Park 〜歩行者軸を超え、憩いと賑わいのあふれる公園へ〜」を計画コンセプトとした。この公園の重要な特徴は、約700mの全長にわたって様々な用途の建築敷地に接していること。道路に四方を囲まれながら都市の中で独立して存在するのではなく、そこにアプローチするには隣接する美術館、商業施設、住宅を介することが前提の公園である。そこで計画にあたってはパブリック領域(公園)とプライベート領域(隣接敷地)の接点に中間領域として「テラス」を設定するという基本構成を採用した。様々に展開する「テラス」空間は、今までの「軸」とは異なる「場」を提供している。人々をそぞろ歩きへ誘うことで屋外のパブリック空間の価値を発見し、それこそがこれからの街をこの公園が牽引する原動力になると考えた。また、広場の中心であり、東西のペデストリアンネットワークとの結節点を「プラザ」、街区全体を貫く水紋の舗装パターンを施した中央の主動線を「モール」と設定し、バラバラに存在していた4つの広場に対して「グランモール公園」のイメージ統一を図った。
 同時に、公園という都市施設にグリーンインフラの思想を加えていくことに努めた。グランモール公園の再整備は「環境未来都市・横浜」のリーディング事業のひとつでもある。貯留砕石路盤の積極的導入に保水性舗装や水景施設を組み合わせ、大きな水循環の仕組みを公園の中に構築した。雨水は浸透側溝から礫間貯留の砕石路盤に保水され、舗装や植物から蒸発散されるという大きな水循環が生み出されている。さらに、ペイブメントはもとよりグレーチングのパターンやファニチャー、従前の照明施設の再利用を含めた光の演出などにも、統一して表現し発信してくことに努めた。

《主な関係者》
○河合康之(株式会社三菱地所設計)/全体統括
○植田直樹(株式会社三菱地所設計)/管理技術者
○津久井敦士(株式会社三菱地所設計)/主たる担当技術者
○熊谷玄(株式会社スタジオゲンクマガイ)/実施設計デザイン協力、監理監修
○富田泰行(株式会社トミタ・ライティングデザイン・オフィス)/実施設計ライティングデザイン協力、監理監修
《主な関係組織》
○横浜市環境創造局公園緑地整備課/事業者
《設計期間》
2012年10月~2015年3月
《施工期間》
2015年4月~2016年3月(第1期)
2017年1月(第2期)
《事業概要》
面積:23,102㎡
立地環境:みなとみらい21地区、埋め立て地、都市再開発エリア
主要施設(主要事業):広場、噴水・水盤、植栽、芝生、ベンチ、サイン、グリーンインフラ、ほか
《事業者》
横浜市環境創造局公園緑地整備課
《設計者》
株式会社三菱地所設計
〈設計協力者〉
株式会社スタジオゲンクマガイ
株式会社トミタ・ライティングデザイン・オフィス
《施工者》
美術の広場地区:第1期
 サカタのタネ・田口園芸JV(修景施設等)
 濱田園・アライグリーンJV(園地整備その1)
 清進・浜川JV(電気設備工事その1)
 金子モリヤ特別JV(機械設備工事その1)
 新興電設工業(高圧受配電設備工事)
美術の広場地区以外:第2期
 濱田園・泰山園JV(園地整備その2)
 横浜植木(園地整備その3)
 京浜電設(電気設備工事その2)
 興和工業(機械設備工事その2)

講評

横浜市みなとみらい地区に1989年供用開始された「グランモール公園」の再整備事業。約700mの街区全長は、美術館、商業施設、住宅など様々な敷地に接している。この街区の特性を捉え、公園のパブリック領域と隣接敷地のプライベート領域の接点に中間領域「テラス」を設える基本構成としている。パブリック領域の公園には、これまで別々な広場を結びつける連続した「モール」を中央に配している。「モール」で散策していると「テラス」が一休みを誘い、プライベート領域の隣接敷地からの滲みだしも受け入れ、相互の憩いや出会いの場となっている。そのため「テラス」は、「モール」の街区の連続性とは違った隣接敷地との関係を読み取った個別の場をデザインしている。多彩な要素(緑系、水景、舗装等)で構成された「テラス」は、計画コンセプト「歩行者軸を越え、憩いと賑わいのあふれる公園へ」の要であり、都市の居間としての場をデザインする際に奨励すべき作品であると評価できる。(森田)


※掲載写真撮影者はフォワードストローク