選考結果について

奨励賞

富山市ブールバール広場再整備TOYAMA CITY BOULEVARD SQUARE

富山市 牛島町168 番、牛島新町114 番、奥田新町118 番
街路、広場

 富山駅北ブールバール地区は富山県富山市に存在する富山駅北側に位置し、ブールバール広場は富山駅北口広場と富岩運河環水公園までを繋ぐ富山駅北線の全長約420m、幅員30mの西側歩道空間である。2020年、富山市ではコンパクトシティの実現のため、長年南北に分断されていた路面電車を富山駅で接続しまちがシームレスにつながった。本再整備は、これからのまちの姿として、公共交通を活用した歩いて楽しいまちを体現する新しい公共空間が実現した象徴的な地区である。
 本地区は、「周辺施設と連携した空間」、「くつろぎの空間」、「賑わいの空間」の3つのゾーンから構成され、歩行空間、芝生空間、デッキ空間の3要素が緩やかなカーブを持って混ざり合い、それぞれのゾーンはどの場所も画一的でない変化のある公園のようなオープンスペースを実現した。
本広場は、広場条例を活用することで、通常の道路整備とは異なる新しい試みが可能となり、イベント活用を想定した沿道施設との連携した舗装計画、機能拡張を前提とした長尺ベンチや可動式日除タープ、ハイポール照明による夜間の回遊性向上、新概念のストリートファニチュアである箱ファニチュア、眺望を重視した橋上ベンチなどを整備し、公共空間の新しい使い方を実現した。
 竣工から1年が経過した現在、沿線企業を主体とした「ブールバールエリアマネジメント富山」を主体とした様々なイベントが行われ、歩行者や近隣住民等により日常的に利用されるシーンが増加した。さらに、沿道に隣接した3×3バスケットコートやスケートパーク、地区全体を繋ぐ新交通Boule BaaSなど、多くの文化施設やスポーツ施設、新しい公共交通との連携により、地区全体の魅力が向上し地域活性の醸成や回遊性がより高まった。

《主な関係者》
○西田 宏(NiX JAPAN 株式会社)/設計全体の管理、設計
○石村 尚太(NiX JAPAN 株式会社)/実施設計全般
○須田 武憲(株式会社 GK設計)/トータルデザインディレクション
○磯部 孝文(株式会社 GK設計)/計画全体のデザイン
○加賀美 鋭(株式会社 GK設計)/照明、ファニチュア類全般のデザイン
《主な関係組織》
○富山市/事業主体、関係者との協議調整
《設計期間》
2019年4月~2021年3月
《施工期間》
2021年9月~2024年3月
《事業費》
約11億円
《事業概要》
面積:約1.0ha
全長:約420m
幅員:約30m
・舗装(半たわみ性舗装、デッキ)
・芝生スペース・芝生の小丘
・照明柱(ポールスポット照明)
・長尺ベンチ・ライン照明(ハイタイプ、ロータイプ)
・可動タープ(日除施設)
・箱ファニチュア(移動式収納庫)
・橋上ファニチュア(休憩施設)
・サイン柱・バナー
・植栽

<連携施設>
・沿道施設との舗装連携
・グリーンスローモビリティ(新交通)
・路面電車新電停
・周辺施設との連携(3×3バスケットコート、スケートボードパーク等)
《事業者》
富山市 建設部 建設政策課
《設計者》
NiX JAPAN 株式会社+株式会社 GK設計
《施工者》
●富山市ブールバール広場(ゾーンA)再整備工事:日本海建興・角地建設・朝日建設富山市ブールバール広場(ゾーンA)再整備工事共同企業体
●富山市ブールバール広場ゾーンB 再整備(その1)工事:日本海建興・角地建設富山市ブールバール広場ゾーンB 再整備(その1)工事共同企業体
●富山市ブールバール広場ゾーンB 再整備(その2)工事:朝日建設・野村土建富山市ブールバール広場ゾーンB 再整備(その2)工事共同企業体
●富山市ブールバール広場(ゾーンC)再整備工事:日本海建興・角地建設富山市ブールバール広場(ゾーンC)再整備工事共同企業体

講評

 多くの地方都市では新幹線駅周辺は閑散としていて、歩いている人の姿もまばらで寂しさを覚えることが多い。しかし富山では、ウォーカブルなコンパクトシティが実現しており、LRTが通り抜ける駅空間は、降り立った瞬間にワクワクする場となっている。今回のブールバール広場は、富山駅北側の再整備によって生まれた、駅から環水公園へと連続する歩道空間の一部である。実際に歩いている人がとても多く、居場所を柔らかく照らす照明計画も心地よく美しい。
 十分な広さをもつ歩道空間は、単なる通行にとどまらず、居場所やイベントなど多様な使われ方の可能性を秘めている。そのポテンシャルを一層引き出すために、今後、広場に面する建築側の設えが変化していくことを期待せずにはいられない。また現在、環水公園に至る経路の一部は未完成である。完成後に駅北口から環水公園、美術館までがどのように連携し、人の流れが形成され、活動に広がりがうまれていくのか、注視していきたい。(栃澤)

※掲載写真撮影者:左から1枚目がNiX JAPAN株式会社、2~6枚目が株式会社GK設計