【東京都目黒区】
用途 / 高速道路、公園、再開発
大橋ジャンクションは、トンネル(中央環状線)と高架(首都高速3 号渋谷線)を高低差約70m の2 回転ループ構造(1 周約400m)で接続するジャンクションである。
建設に際しては、移転問題、地域分断、環境問題など、周辺地域に及ぼす影響が懸念された。そこで、地区の将来の動向を見据え、長期的な視点からジャンクション建設を契機とした“まちづくり”を行った。
当該地域には大橋ジャンクションの「道路区域」が存在し、通常では建築物などを自由に建設することが制限される。そこで、立体道路制度を活用し、道路敷地の上下空間の建物建設を可能にすることで、事業エリア内の敷地を有効活用し、合理的かつ健全な土地の高度利用と土地機能の更新を実現した。
大気や騒音等による周辺環境への影響を低減するめ、ループ部を覆う「覆蓋」を設け、外壁にはスリットやテクスチャーを入れることで、巨大感、圧迫感をやわらげ、街並みに馴染むように工夫した。更に、常緑でつる性のオオイタビなどを用いた地表面からの緑化を施すこと
で、時間の経過ととともに地域景観と調和し、人の心を和ませ、緑豊かなジャンクションに風格をもたらすことを意図した。また、ジャンクション地下部分の施工においては、2本のシールドトンネルを地下部分のみで接続する非開削切開き工法を採用することで、地上交通に影響を与えないよう配慮した。
ジャンクション屋上に整備され、2棟の再開発ビルからもアクセスできる「目黒天空庭園」は、人と自然が共生でき、四季折々の自然や和の文化が楽しめる回廊式の和風庭園である。換気所屋上には、かつての目黒川周辺の原風景をモデルとした自然再生空間を創出した。周辺の緑や目黒川の自然と連係することで、地域の環境改善に寄与できる緑化空間を整備した。
竣工してから、行かなければと思いながら、なかなか脚が向かない。最初の出会いは学生たちを連れての目黒川歩き、中目黒から上流に向かって歩く。フト、現れた構造物は、目黒川と桜並木に不思議になじみ、郷愁さえ感じさせるものであった。2度目は審査の機会を得てからのこと。246 沿いを進む、高速道路、横断歩道橋、高層ビルが重なり合う中、入り口を求めてすすむ。これらの巨大な形の重なりは大都市の魅力そのもの。そんなスケールと庭園的な所作のアプローチの差異に戸惑いながらも庭園に到達する。歩みを進める。心地よい。ゆったりしたスロープ、階段、緩やかにカーブする細長い空間は常に陽の光や風の向きを変えてく
れる。園路に誘われ、いつの間にか、最上部に運ばれた自分を発見する。ジャンクションという、都市交通に必要欠くべからざる構造物の出現は同時に緩やかに広がる「新しい地形」を生み出した。近くの保育園の子どもたち、若いお母さんとベビーカー、高齢のご夫婦、お弁当を持ち込みゆったりと過ごすカップル。庭園というよりも、独特の地形を持つオープンスペースとして利用され、さらに目黒川の自然と連携した場に姿を変えながら熟していくことを期待する。(吉村純)
高速道路土木構築物と建築と造園の都市複合施設であるが、その中心をなすのが大橋ジャンクションである。コンクリートの巨大な構築物であるが、本体の圧迫感はあまりない。国道246 や目黒川側など見る方向によって大きく表情を変え、壁面のテクスチャーや窓状のスリットなど、建築的な要素を入れてマッシブに見えない工夫をしていることもあるが、東京の都市景観はこれくらいのヴォリュームを平気で飲み込む、と言うことなのかも知れない。特にチューブのような4 本の接続高架橋と首都高速3号渋谷線高架道路と本体が織りなす光景は、暴力的ではあるが、むしろ爆発的なエネルギーを放出する都市のダイナミズムの表出だと、肯定的に捕らえたい。また、高速C2 と3 号渋谷線との移行に、車線のカラーリングにより直感的に誘導されるのも、はじめて運転する人達に安心感を与えている。施設全体は行き止まりのない回遊性のある立体的な動線により、多くの人々がスポーツや散歩や軽いピクニックなど、様々な楽しみ方をしているのが印象的であるが故に、都市と連続しない完結した日本式庭園の選択に違和感を覚えたのと、おざなりなストリートファニチャーの選択が残念である。(武田)