福井県敦賀市鉄輪町1-1-19/福井県白銀町1-1,9-1,9-2、鉄輪町1丁目2-1,2-2
交流施設(物販・休憩所)/バス停上屋・キャノピー
福井県敦賀駅に直結する、待合機能も兼ねた交流施設「オルパーク」と、キャノピーを含む駅前広場の計画である。
「オルパーク」は、今も多くの市民に愛着をもって記憶されている木造駅舎(明治42年頃)のイメージを継承して欲しいという市民の強い想いに応えたものである。僅かに残る当時の写真から駅舎の図面を起こし、その特徴的な外観―木造2階建て、両翼の間にキャノピーのかかる姿―を2つの「木の箱」で象徴的に復元し、さらに新しい駅舎に必要な機能を補完するよう、大きな「ガラスの箱」で包むことで、過去と未来を繋ぐ敦賀の新しい顔を誕生させた。
「木の箱」は、開口や仕上げを踏襲し、耐震要素も担わせ、内部は待合室や売店、ロビーなど多目的に使える空間としている。
一方「ガラスの箱」との間に挟まれた縁側状の空間は、人が往来したり佇んだりできる場で、空調的には、敦賀の冬の厳しい気候に対するバッファーとして、内部環境の安定や消費エネルギーの削減に貢献している。
駅前広場は、都市計画決定された道路線形を尊重しつつも、わかりやすく快適な場にするために、バス停、タクシーの乗降場や待機所、既存商店街との微調整を繰り返し、また混沌としていた駅前のあらゆる情報を可能な限り整理し、それらをキャノピーのデザインと一体化させることで、屋根でありバス停でもあり、ベンチや時刻表、広告や街の地図でもあるキャノピーとした。
構造は、こうした微調整にも追随できるよう小さな構造単位の集合体とし、柱の位置も最後まで微調整可能な柔軟性の高い架構形式とした。現場での地組みの大きさも調整可能なこの形式は、休むことのない駅前という立地に応えたものでもある。軒裏は、屋根からの輻射熱の軽減と、温かみのある空間を提供するために木仕上げとしている。
堅牢でありながら温かく、地域特性に応えながら誰にでもわかりやすい場づくりは、訪れる人を優しく迎え、人々が主役となる新しい交通広場となっている。
シェルター構造の工夫として、骨格から生じる曲げモーメントは、その面にサインを配置する版で受けて、対となる柱は細く目立たなくして街に溶け込ませている。版面の向きは、場所によって90度変わるように駅前広場全体にわたる構造グリッドを調整していて、それが視線の抜けの多様さを演出。
交流施設(オルパーク)の2階は、市民が自由に使える空間が配置され、訪問当日は、机と椅子が置かれ、さまざまな方々がそれぞれの使い方、会話を楽しんでいた。運用次第でさらに市民に愛される空間となる可能性を感じた。
一方、一人の旅行者として駅改札を抜け、駅前広場にたどり着いた時の全体的印象は、普通であった。街側から見ると、駅奥に北陸新幹線高架駅が建設中で、景観としての駅前広場の存在感が消えてしまうぐらい、その大きさに圧倒された。隣接する公園との関係性も気になる。将来全体像が見えない中、斬新な工夫と市民に愛される施設となる可能性を評価し、奨励賞としました。(松井)