選考結果について

奨励賞

さくらみらい橋Sakuramirai Footbridge

神奈川県横浜市中区桜木町1丁目~中区本町6丁目
歩行者専用橋

本橋は、桜木町駅と横浜市新市庁舎を結ぶ屋根付き歩道橋である。庁舎を含む再開発地区への歩行者動線の容量確保と利便性向上、緊急時の避難路確保を目的として計画された。横浜は、山下公園をはじめとし、水辺を人々に開いてきた歴史を持つ。新市庁舎においても、低層部の水辺を市民に開く計画であった。我々は、こうした思想を継承し、「水辺を開く橋」というコンセプトを設定した。橋が周囲の風景を楽しめる場所となり、庁舎と一体となった空間が街の魅力向上につながることを目指した。
橋梁形式については、接続条件と構造の両立のため、Y型平面の多径間連続ラーメン構造とした。利用者にとって自然な動線となる曲線線形とし、桁橋に屋根を載せたシンプルな構成とした。2つの屋根が渡河部で合流する形式とすることで、遠景からはシンプルなシルエットとなり、橋上は両側に視界が開ける場所となった。
この曲線線形、桁橋+屋根のシンプルな構成という特徴は、条件変更に対する対応を意図したものでもある。橋脚位置に厳しい制約がある中、主動線の変更、河川内橋脚不可による支間拡大、接続先や幅員の変更といった様々な変更が生じた。これらに対し、曲率の調整、桁高や幅員及び円弧状ブラケットの連続的変化、線形に合わせた屋根形状の修正など、各部の調整を互いに連動させながら行なった。これにより当初のイメージを大きく変えることなく、3つの経路を一つのデザインとして統合させることができた。
曲線を基調としたデザインは、「水辺を開く」というコンセプトの実現と、自然な動線や条件変更への対応など構造物としての合理性の両立を意図したものである。その結果、生み出された形もこれまでにあまり見られない新しいデザインとなっている。
竣工後は、橋面からの風景を撮影する人、ジョギングルートにする人、人気ドラマの撮影など、様々に利用されている。横浜の新たな魅力の一つとなってきている。

《主な関係者》
◯西山 健一(株式会社イー・エー・ユー)/全体意匠デザイン
◯田邊 裕之(株式会社イー・エー・ユー)/全体意匠デザイン
◯瓜生 浩二(kuaa.)/屋根意匠デザイン
◯水津 紀陽(八千代エンジニヤリング株式会社)/設計全体統括、橋梁構造設計
◯谷口 和昭(八千代エンジニヤリング株式会社)/設計全体統括、橋梁構造設計
◯岡村 仁(株式会社KAP)/屋根構造設計
◯堀内 深(八千代エンジニヤリング株式会社) /設計全体統括、橋梁構造設計
◯小川 篤志(八千代エンジニヤリング株式会社) /設計全体統括、景観デザイン設計調整
◯梅原 智洋(株式会社KAP(当時)フリーランス(現在))/駅接続屋根構造設計
◯安仁屋 宗太(株式会社イー・エー・ユー)/プロポーザル段階における全体意匠デザイン
《主な関係組織》
◯横浜市道路局建設部建設課/事業の構想および推進
◯(仮称)大岡川横断人道橋設計デザイン検討会/橋梁デザインに関する助言
◯八千代エンジニヤリング株式会社/全体総括・橋梁構造設計
◯株式会社イー・エー・ユー/全体デザイン
◯kuaa. /屋根デザイン
◯株式会社KAP/屋根構造設計
◯エム・エムブリッジ株式会社/デザインの具現化・施工(本体工、屋根製作・架設)
◯宇野重工株式会社/デザインの具現化・施工(高欄・鋼製地覆・橋面工)
◯土志田建設株式会社/デザインの具現化・施工(基礎工・道路附帯工)
◯ステーション工業株式会社/デザインの具現化・施工(照明・電気設備)
《設計期間》
2016年5月~2020年3月
《施工期間》
2017年12月~2020年6月
《事業費》
約34億円
《事業概要》
橋長・支間長
 橋長
  232m(主橋梁部:195m、接続桁部:37m)
 支間長
  経路A:68.0+5.3m、経路B:2.5+50.0m、経路C:7.5+20.0+41.5m(以上主橋梁部)
  P4-P5間:17.0m(接続桁部)
構造形式
 上部工:4径間連続ラーメン鋼床版箱桁橋(主橋梁部)、単純ラーメン鋼床版箱桁橋(接続桁部)
 下部工:鋼製円柱型橋脚
 基礎工:場所打ちコンクリート杭
幅員
 経路A:8.1m、経路B:5.45m、経路C:3.95m
《事業者》
横浜市道路局建設部建設課
《設計者》
全体統括、橋梁構造
 八千代エンジニヤリング株式会社
〈設計協力者〉
全体意匠
 株式会社イー・エー・ユー
屋根意匠
 kuaa.
屋根構造
 株式会社KAP
《施工者》
本体工、屋根製作・架設
 エム・エムブリッジ株式会社
高欄・鋼製地覆・橋面工
 宇野重工株式会社
基礎工・道路附帯工
 土志田建設株式会社
照明・電気設備
 ステーション工業株式会社

講評

JR桜木町駅方面から横浜市新庁舎に接続する歩行動線を補う新たな歩道橋である。橋脚を設置せずに跨ぐ河川、近接する橋梁やトンネル、近隣ビルとの接続などからなる複雑で厳しい架橋条件の下でつくられているが、その苦労を感じないほどに、きれいにまとめられている。
実際に橋を渡ると、緩やかなカーブを描く線形により、横浜らしい景観が次々と展開するシークエンス体験が得られる。それを引き立てるデッキと屋根のシンプルなディテールデザインは、先進性や上質さを感じる秀逸なレベルである。横浜の新たな視点場となる「長い展望台」が生み出されたことは、高く評価できる。
その一方で、外側からの見え方は凡庸な印象が拭えない。曲線桁から床版を支えるブラケットには過剰さがあり、川沿いのデッキからの見え方や昇降部などには煩雑さが残っている。今後、周辺環境に馴染んでいくことで、横浜の新たな風景としての価値を獲得することを期待したい。(八馬)

※掲載写真撮影者は左から1-3、5-6枚目がKazumi Kiuchi、4枚目が山田照明株式会社