選考結果について

奨励賞

大分 昭和通り・交差点四隅広場The Showa Boulevard and Intersection Public Squares in Oita

大分市内 国道197号線 寿町1丁目交差点~県庁北交差点の区間
道路・歩道・交差点四隅の広場空間

大分市中心部にある昭和通りは、沿道に県庁や市役所、県立美術館等が立ち並ぶ大通りである。しかし、同通りは従来から歩道舗装の不統一や歩道橋、横断防止柵等の劣化が問題視されていた。また大分駅から伸びる中央通りとの交差点四隅には、約20m四方の空地がそれぞれ存在し、全国的にも珍しい交差点を有していた。しかし、それらの空地内には鬱蒼とした植栽が林立し、人の活動もほぼ皆無なうえ、交差点側歩道の派手な舗装が景観的にも問題視されていた。
一方、同通りの城址公園沿いには大正時代以前からあるクロマツの区間がある。しかし、バス専用右折レーンがあるために他区間よりも1車線多く、歩道幅員の狭さから、歩行者が円滑に通れない状況にあった。これを受け大分県は平成27年度より昭和通り再整備事業に着手し、整備方針等に関する提言を目的とした「リボーン197協議会」を発足させ、昭和通りの歩道と交差点四隅にある空地の改修を行った。
具体的には、上記交差点四隅を広場化し、通りを往来、信号待ちする歩行者が一休みできるロングベンチを四隅全てに一体的に配備した。四隅各広場は近くの高校に通う生徒、通勤する会社員といった利用者の動線とともに、市内で盛んな野外音楽イベントでの利用、隣接ホテルからの眺め等を考慮したデザインが施されている。またクロマツ区間においては、渋滞調査等を踏まえた協議会での調整によって整備方針が決められ、時間帯バス専用レーンをなくすことで歩道を拡幅し、クロマツの保全と歩行者の円滑な通行を両立させた。さらに劣化とともに歩車分離信号の運用で利用者の少なかった歩道橋ならびに雑然としていた低木植栽を撤去し、自転車道の新設とシンプルな歩道舗装を連続的に敷設するなど、通り全体が改修された。改修前後に行ったヒアリング調査、動線調査の結果からも、通り全体の通行しやすさや景観的向上、四隅広場での人の進入や活動等が確認されている。

《主な関係者》
◯柴田 久(福岡大学工学部景観まちづくり研究室 教授)/コンセプト提案、基本設計、実施設計監修、現場監理(デザイン監修)
◯亀野 辰三(大分工業高等専門学校 教授(当時) 大分工業高等専門学校 名誉教授(現在))/協議会におけるコンセプト提案・計画内容とりまとめの主導
◯西口 徹(株式会社オオバ)/基本設計、実施設計
◯松本 識史(株式会社オオバ)/基本設計、実施設計
《主な関係組織》
◯大分県庁 土木建築部道路保全課・大分土木事務所/事業主体、設計監理、現場監理
◯リボーン197協議会/整備方針の検討、調整、提案
◯福岡大学工学部景観まちづくり研究室/整備方針の検討支援、基本設計、実施設計のデザイン支援
◯株式会社オオバ/基本設計、実施設計
◯協同エンジニアリング株式会社/実施設計(歩道部)
《設計期間》
2016年9月〜2017年6月
《施工期間》
2017年10月〜2019年6月
《事業費》
約8.7億円
《事業概要》
区間長:1040 m/車道幅員:19.5 m/歩道幅員:6.3 m
交差点四隅広場(通路含む)総面積1970 m²
《事業者》
大分県庁 土木建築部 道路保全課・大分土木事務所
《設計者》
株式会社オオバ
福岡大学 景観まちづくり研究室
協同エンジニアリング株式会社
〈設計協力者〉
昭和鉄工株式会社
《施工者》
株式会社ジョーナン
株式会社敷島組
株式会社藤信
朝日工業株式会社
〈施工協力者〉
三和コンクリート株式会社

講評

対象は街の中心に位置する街路と交差点空間をリフォームしたプロジェクトである。現代の地方都市に適した手法で丁寧にデザインされ、さまざまな関係者間の複雑な調整があったようには感じられない統一感や質感が実現している。特に車線のありようを見直し、より良い形で並木を残したことは、今後の街路再生への重要な示唆が含まれている。
この整備により、交差点の四隅がオープンスペースという空間特性が上手く活用されはじめたものの、隣接する建築物との関係は希薄である。大分駅周辺やアーケード街を中心とする街のアクティビティが十分接続されていないようであり、全体としては自動車交通のスケールのままであるように感じる。
デザインのクオリティを保つ維持管理が適切に行われ、緑陰が効果的に機能するように生長し、街の中での位置付けを徐々に獲得できれば、この空間が有するポテンシャルが発揮されていくだろう。(八馬)