東京都町田市
駅、公園、商業施設、調整池、道路、広場、橋梁
南町田グランベリーパークは、東京都町田市の南端にある東急田園都市線「南町田グランベリーパーク駅」(2019年10月1日改称)南側の約22haのエリアを指す。
本取組は、「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」と冠し、駅に直結して大規模な都市公園と商業施設が隣り合うエリアの立地特性を最大限に活かし、鉄道事業者と行政が共同して駅前空間の魅力を再構築することで、人口減少・超高齢化を迎える郊外住宅地の持続的発展を目指した、官民共同によるプロジェクトである。
一度整備された市街地を再魅力化するにあたり、このまちで展開される“人々のアクティビティ”を本旨とし、その“器”として、「すべてが公園のようなまち」というコンセプトを掲げ、オープンスペースを基調としたウォーカブルなまちへと構造を大きく変え、細部の設えにも工夫を凝らした。
人々の動線の起点となる駅は、北側の交通広場と南側のエリアを繋ぐ自由通路整備に合わせて橋上化を図るとともに、緑化や水景、大階段の設置など高揚感を感じられる計画とした。駅の南側では、商業街区と公園を分断していた道路を再度の土地区画整理事業により再配置することで大街区化を図り、一体となった街区全体に歩行者ネットワークを張り巡らせた。一連の歩行者ネットワークには共通した舗装デザインやグリーンインフラを採用しており、その要衝には14の屋外広場を配置し、積極的な緑化やベンチを設えることで滞在性を向上させている。
本プロジェクトでは、官民の境目なく、オープンスペースを中心とした市街地のリデザイン(再編集)を施し、まちそのものが、郊外住宅地における“暮らしのグリーンインフラ”となることを目指してきた。2019年11月にまちびらきを迎えた南町田グランベリーパークでは、子どもからお年寄りまで多くの人が、思い思いに寛ぎ、時間を楽しむ様子が見られ、「パークライフの拠点」として根づき始めている。
まず「南町田グランベリーパーク」という名の駅に降り立ったところから、鉄道とまちづくりの一体性を予感させる実見のスタートだった。自由通路を介し、駅から直結する商業街区への動線は、事業者である町田市と東急電鉄とのパートナーシップの成果といえる。特に以前、公園と商業街区を分断していた幅員12mの堀割状道路を土地区画整理事業によって再配置し、一体的な大街区を形成させた功績は大きい。緩やかに傾斜する地形を活かしたパークプラザと歩行者通路の再編も、商業街区と公園との円滑な往来を達成している。鶴間公園側の森として再生された樹林エリアには、木調のベンチや遊具が地形に沿うように配され、多くの来訪者で賑わっていた。また商業街区の敷地外周には、雨水を浸透させる「バイオスウェル」や「レインガーデン」が設置され、グリーンインフラの価値と可能性を示唆している。周辺に住まわれているのであろう親子連れの笑顔、ベンチに座って友人との会話を楽しむ若者達、楽しそうに走り回る子ども達の目の輝き。南町田グランベリーパークが目指した「パークライフ」の豊かさが何なのか、肯かされる光景の連続であった。(柴田)
駅のホームに降りた時,テーマパークのような歓迎感にびっくりし,改札から意識しないままに導かれるショッピングモールの賑わいにギョッとしたのが正直な第一印象である。土木学会デザイン賞として評価すべき空間なのかと。しかし,合わせて再整備された鶴間公園まで至ると,少しずつ印象が変わっていった。楽しく可愛い遊具やベンチなどが設置されているが,その配置が適切である。モールと公園の間に新設された街路からは適度に公園が見通され,大きな高低差をつなぐスロープも,既存樹木を縫うように設置されている。これらの整備は,既存の鶴間公園をよく読み取り,問題を解消しつつ,公園の価値を最大限に引き出しているように感じられ,境川まで至るとその印象は確信に変わった。つまり,一見オシャレで今風な意匠も,骨格的なインフラと密接に結びついて機能しているのである。そういう視点で振り返れば,この整備の根幹には,まずは区画整理を活用した街区構成,インフラへの問い直しがあった。また,モールの外観は低く抑えられ,周辺とともに街並みをつくっていこうとしている意識も感じられた。土木デザインとしても優れた価値を有した整備であると結論したい。(星野)
※掲載写真撮影者は町田市・東急